【Sakeから観光立国】香港出身の新たな「酒サムライ」 ミッキー・チャン氏

2017.10.13 18:45

 □平出淑恵(酒サムライコーディネーター)

 若手蔵元の全国組織、日本酒造青年協議会(前垣壽宏会長)により、今年新たに日本酒のアンバサダー(大使)「酒サムライ」に選ばれた、香港出身のミッキー・チャン氏を紹介したい。叙任式の後に行われた記者会見で、日本酒との出合いは父親がきっかけだったことを語り、日本酒の啓蒙(けいもう)活動に温かい理解を示してくれる、母親とガールフレンドに感謝の言葉を述べていた。

 2010年、香港初の酒サムライとなったルイス・ホー氏も、叙任式に駆けつけ「香港人の酒サムライが増えてうれしい」と顔をほころばせた。

 チャン氏は現在、香港ワインアカデミーのディレクターで筆頭講師も務め、ワインとともに日本酒についても教えている。日本政府の事業として海外の日本酒教育者を招聘(しょうへい)し、公的研究機関である酒類総合研究所が初めて海外人材を受け入れた際にも、来日した。

 世界最大のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)で、ワイン、日本酒の両部門の審査員を担当する数少ない一人。昨年から香港を中心に創刊した、日本食と日本酒の専門誌「ウマイ マガジン」の共同発行人であり、編集長も務めている。

 この専門誌は、今後、台湾、カナダなどで電子版の発行が予定されているそうだ。「酒サムライの叙任は大きな励みだ。これがゴールではなく、新たな出発と思っている」とコメントはどこまでも頼もしい。

 日本酒の輸出は、政府による日本産酒類の輸出振興策もあり年々伸びてはいるものの、海外市場はまだまだ小さい。一方、海外市場での日本酒の啓蒙や人材育成は、ほとんどが中小事業者である国内の酒造業者が自ら行うには困難が多すぎる。

 こうした中、チャン氏をはじめ世界各地で力強く日本酒を発信する、酒サムライへの期待は高まるばかりだ。さらなる発展と活躍を期待している。

【プロフィル】平出淑恵

 ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年、日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年、コーポ・サチを設立、社長に就任。世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)のアンバサダー。日本ソムリエ協会理事、日本酒蔵ツーリズム推進協議会運営委員、昇龍道大使(中部9県のインバウンド大使)などを務める。

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