【フロントランナー 地域金融】興能信用金庫の桶谷浩義部長代理(2)

2017.11.1 05:10

 □興能信用金庫本店営業部の桶谷浩義部長代理

 ■目先の融資ではなく顧客の利益優先

 出向先の石川県産業創出支援機構・地域振興部から興能信用金庫本店営業部に戻ってから、桶谷浩義部長代理は同機構での経験を生かし、ファンドや補助金・助成金を絡めた事業支援を推進している。昨年度は4件の支援先が補助金などに採択される実績をあげた。機構時代に申請を支援した企業が興能信用金庫へ相談に訪れ、再びサポートしたこともあるという。

 補助金などはつなぎ融資といった実績にも結びつくが、桶谷氏の場合は、目先の融資にとらわれず、顧客にとっての利益を第一に考えて取り組んでいる。

 例えば、他県からの移住者による飲食店の新規創業支援では、あえて日本政策金融公庫(日本公庫)からの借り入れを勧めたこともある。創業支援補助金の申請書作成は一から手伝っていたため、肝心の融資を日本公庫に譲る形になった。

 「支援を行ううえで常々心がけているのは、その方にこの土地で長く事業を営んでもらおうということ。自分の融資実績だけを考えれば当金庫で資金調達していただいた方が良いのですが、真にお客さまの立場に立ったとき、公庫の融資を利用した方が有利な条件で創業できるケースもあると考えています」と、桶谷氏は話す。

 ただ、この案件は将来の資金需要の見込みもある。創業者はいずれ農家民宿を開業する予定のため、設備投資を行う際はまた桶谷氏に相談したいと申し出てくれたという。

 ファンドや補助金の申請だけでなく、公共事業の入札支援を行った経験もある。

 昨年、能登町が宇出津港に新設した水産物加工処理施設を管理・活用する事業者(指定管理者)を募ったときのこと。地元の漁業関係者と農業関係者が協力して設立した企業が、「入札に参加したいので力を貸してほしい」と興能信用金庫に協力を要請してきた。

 その背景には、宇出津では水揚げされた魚を地元で冷凍・加工できず、金沢などの専門業者に委託せざるを得ないという実情があった。なんとかしてこれを改め「地元の雇用確保や地場の魚の付加価値向上につなげたい」というのが、宇出津の漁業関係者に共通した願いだった。

 日頃からさまざまな企業と交渉し、事業計画策定の経験も豊富だったことから、初めに対応していた本部の専門担当者が桶谷さんに協力を依頼。連携して支援を担当することになった。

 外部機関に頼ることなく、施設を活用したビジネスプラン。すなわち一定以上の人員をそろえることで雇用を確保し、地元の魚介類を買い支えながら、加工した品を東京などの大都市圏に販売する事業計画を構築していった。

 そして入札の結果、指定管理者の指名を見事に勝ち取り、今年4月から稼働を開始。「積年の願いを実現できた」と地元関係者から大変感謝され、指定を受けた企業からは当座貸し越しの契約を獲得した。

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp

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