JDI、550億円の資金調達 増資や能美工場売却、財務改善や液晶パネルの増産投資に

2018.3.31 06:04

 経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は30日、第三者割当増資などで約550億円の資金を調達すると発表した。海外ファンドと発光ダイオード(LED)大手の日亜化学工業(徳島県阿南市)に新株を割り当てるほか、昨年12月に稼働を停止した能美工場(石川県能美市)を売却し、財務の改善や液晶パネルの増産投資に充てる。

 JDIは増資で、30の海外ファンドから300億円、日亜化学から約50億円を調達する。増資後に産業革新機構の議決権比率は35.58%から26.82%に下がるが、筆頭株主であることは変わらない。能美工場は革新機構に約200億円で売却する。

 一方、JDIは有機EL開発のJOLEDの議決権比率を現在の15%から51%に引き上げる計画を撤回する。JOLEDの中型の有機ELパネルの量産に向けた資金をJDIが捻出する予定だったが、財務悪化で難しくなったため。JOLEDはデンソーなどを引受先とする1000億円程度の増資を行う予定だ。

 JDIの2018年3月期の最終損益は4期連続の赤字に陥る見通し。財務の立て直しに向け、海外の事業会社と資本提携を模索してきたが、交渉が難航して期限としてきた3月末に間に合わなくなった。

 JDIの業績不振は、スマートフォン向けパネルで液晶から次世代の有機ELへの転換が進み、主力の液晶の受注が大幅に減少したためだ。昨年8月に公表した再建計画では、有機ELシフトと他社との資本提携を掲げた。JDIのスマホ向け有機ELは試作段階だが、量産に向けた資金を自前で賄うのは難しく、提携を通じて調達する必要があった。

 中国のパネル大手の京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)など数社と交渉を続けてきたが、「有機ELシフトが想定より遅れる見方が広がり、仕切り直しになった」とJDI幹部は明かす。

 背景にはスマホ向け有機ELパネルの伸び悩みがある。最大顧客の米アップルは17年に「iPhone」の旗艦モデルに有機ELを採用したが、10万円超の高価格がネックになり販売は想定通りに伸びていない。

 このためJDIはファンドなどから出資を受けて財務を改善する戦略に転換した。足元では液晶の受注も回復、増産に向けた資金の手当ても必要だった。しかし先行きはデザイン自由度の高い有機ELシフトが進むとの見方は変わらず、「資本提携の交渉も改めて進めなければならない」とJDI幹部は語る。

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