北海道・厚岸蒸溜所のウイスキー初出荷 地域活性化へ見学ツアーも

2018.4.27 05:51

 北海道厚岸町に新設された蒸留所がウイスキーを初出荷した。2月末に約1万本の全国販売が始まり、既に品薄状態だ。小規模設備で造られた各地の「クラフトウイスキー」が話題となる中、原料の大麦や熟成用のたるを厚岸町産でまかなう構想もあり、地域活性化に期待が膨らむ。

 英産地に似た気候

 食品原料や酒類の輸出入を手掛ける堅展実業(東京)が建設した「厚岸蒸溜所」は、2016年11月に本格稼働した。立崎勝幸所長(50)は「ウイスキー造りで、厚岸は願ってもない場所」と話す。太平洋に面して夏に霧が発生しやすく、気温も冷涼。英国スコットランドのウイスキー産地、アイラ島の気候に似ているという。

 同社によると、00年代後半から国産ウイスキーの人気が高まり、まとまった量を仕入れることが難しくなった。独自生産を模索し、気候に加えて水が清らかなことから厚岸町を建設地とした。

 白い外壁の蒸留棟にはスコットランドから取り寄せた「ポットスチル」と呼ばれる高さ約5メートルの蒸留器、麦汁を作る仕込み釜が並び、香ばしい麦の香りが漂う。

 初商品の「厚岸NEW BORN(ニューボーン)」は「かんきつ類やバニラのような香りを楽しめる」と立崎所長。ピート(泥炭)で薫製のような香りを付けた商品も今年8月に販売予定だ。

 北海道では余市町のニッカウヰスキー余市蒸溜所が有名で、所内見学で観光名所になっている。一般見学を想定していなかった厚岸蒸溜所にも希望の声が寄せられ、町内で道の駅を運営する第三セクターがツアーを企画。蒸留棟には入れないが、建物上部の大きな窓から内部を見て、ニューボーンの試飲もできる。

 農協協力で大麦栽培

 国内各地では地域に根ざした小規模蒸留所が個性的なウイスキーを造り、好評を得ている。堅展実業は、厚岸蒸溜所で造られた原酒のみを使うシングルモルトウイスキーを20年に販売予定。大麦やピート、たるの原材料を含め「オール厚岸産」の商品開発も目指す。

 協力に乗り出した釧路太田農協(厚岸町)は昨年、ウイスキー向けの大麦を試験栽培した。実った麦の一部は冷涼、湿潤な気候の影響で小粒だった。農協担当者は「大麦を乾燥する施設や収穫用機械も必要だ」とし、採算を考えながら今年も試験栽培を行うという。

 立崎所長は「ウイスキー造りの伝統は守りつつ、カキなど厚岸の特産品とも合うように品質を高めたい」と語った。

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