仮想通貨交換、みなし業者の廃業相次ぐ 規制強化、コスト増に対応できず

2018.5.15 06:10

 仮想通貨交換業者としての登録を金融庁に申請中の「みなし業者」が申請を取り下げ、実質廃業するケースが相次いでいる。不正アクセスで巨額の仮想通貨が流出したコインチェック事件以降、金融庁は立ち入り検査で実質的に規制を強化。これに対応できない業者が撤退しており、さらに淘汰(とうた)は進む見通しだ。

 仮想通貨交換所クラーケンを運営するみなし交換業者「ペイワードジャパン」は6月末までに日本から撤退することを決めた。コスト増が理由とみられ、「日本居住者向けサービスの廃止に伴い、新規アカウント登録は受け付けない」などと告知している。

 コインチェック事件以降、金融庁は交換業者に一斉に検査に入り、「みなし業者」を中心に業務改善命令や業務停止命令を相次いで出した。サイバーセキュリティー対策などを優先すべきときに、派手な広告による顧客獲得を優先している事例が多い上、顧客資産の私的流用などの事例も見つかったからだ。

 指摘を受けた交換業者側は経営体制の改善などに乗り出したが、一部の交換業者は改善命令を受け入れずに撤退を決定。「大手を除けば、セキュリティー費用のコスト増と運営による収益が見合わない。これでは事業を継続する意味がない」(仮想通貨交換業者)ことが大きいとみられている。

 さらに仮想通貨交換業者がシステム障害対策や顧客への補償方法などに関する自主規制を設ける動きが進めば、さらにコストはかさむ見通し。現在、みなし業者16社のうち、7社が登録申請を取り下げ、実質廃業する形となっている。

 併せて新規参入を断念する動きも出ている。サイバーエージェントは交換所の開設までに想定以上の時間がかかると判断。交換業者の登録申請は取り下げていないが、交換業はとりやめ、独自の仮想通貨の発行に切り替えて来年にも事業化する見通しだ。コインチェックを買収したインターネット証券のマネックスグループも「毀損(きそん)した顧客基盤をいかに回復するかや、数々の訴訟リスクへの対応など課題を抱えている」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの廉了氏)。業界の再編は今後も続く見通しだ。(飯田耕司)

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