スバル 不祥事対応も後手 経営陣、現場と乖離 

2018.6.5 23:52

 燃費などの測定データ改竄(かいざん)をめぐり、新たな問題が判明したSUBARU(スバル)。不正発覚が相次いだ背景には、経営と現場の意思疎通の問題があるとみられ、改善は急務だ。吉永泰之社長が就任して以来、主力の北米を中心に販売台数を大きく伸ばしてきただけに、急成長の“ゆがみ”が表面化した格好。不祥事対応も後手に回り、信頼回復は容易でない状況だ。

 「現場の声が途中でつぶされ、経営陣に入ってこない。そういう風土を変えなければならない」

 吉永氏は5日の会見で嘆いた。データ改竄問題を経営陣が当初、過小評価していたのも、3月末までとしていた調査結果公表が4月下旬にずれ込んだのも、現場の担当者からの聞き取りが難航したからだ。

 吉永氏が社長に就任したのは平成23年。30年3月期までに世界販売台数は6割増の約107万台に膨らみ、業容は拡大した。吉永氏は「現場に負担が増えていたのは事実」と認める。

 また、不祥事に対する対応が誤解を招いた。3月には一連の不正を受けて3役員が退任するなど経営刷新を発表したが、吉永氏は会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する予定とした。「逃げない姿勢を示したかった」という理由だが、“居座り”とも捉えられかねない人事で、不信感を増幅させた面がある。

 「会社に宿るうみを出し尽くす」。CEOを外れ、経営の一線から身を引く吉永氏だが、信頼回復というこれまで以上の難題に挑む。

(高橋寛次)

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