スバル、つながる安全で死亡事故ゼロへ 中期経営ビジョン、品質向上に1500億円

2018.7.11 06:11

 SUBARU(スバル)は10日、2025年までの中期経営ビジョンを公表した。燃費測定データ改竄(かいざん)など一連の不正を受け組織風土改革を進めるとともに、品質向上に5年間で1500億円の投資枠を確保。自動運転関連では、スバルの車両による交通死亡事故ゼロを目指すとした。大きな成長は見込まず、米国事業を中心とした高収益体質を維持していく考えだが、米政権が輸入車の関税引き上げを検討するなど先行きにリスクもはらむ。

 中村知美社長は東京都内で開催した説明会の冒頭、新車の無資格検査や燃費・排ガスの測定データ改竄などを念頭に「真の実力を養成し、信頼を取り戻したい」と述べた。これに関連して品質向上を重点課題に位置づけ、商品企画から生産までの過程を見直す。投資枠は、これまで生産能力を上げるために投じてきた資金を品質向上に振り向けたり、販売店の支援により顧客へのアフターサービスを強化したりすることに使う。

 死亡事故ゼロはスバル車の乗員だけでなく、スバル車との衝突による歩行者なども対象で、30年の実現を目指す。同社は自動ブレーキなどの先進安全技術「アイサイト」を展開してきたが、道路や信号機などのインフラと車が通信することでさらに安全性能を高める考えだ。大抜哲雄・技術統括本部長は「『つながる安全』により死亡事故を確実に減らせる手応えを感じている」と強調した。

 業績目標は18~20年度の3カ年の合計で売上高10兆円、営業利益9500億円を掲げたが、17年度までの3カ年と比べると売上高は微増、営業利益は4000億円程度減る計算。同社関係者は「利益を追わず、品質を重視するという姿勢の表れだ」と打ち明ける。

 一方、主力の米国販売は25年度に現在より3割近く多い85万台とする目標を掲げた。収益性の高い米国事業が、17年度で11%と同業大手の中でも高い営業利益率の源泉だからだ。それだけに米国が検討する関税引き上げについて、中村氏は「非常に大きな問題で、対応は簡単ではない」と強い危機感を示した。

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