アマゾンのクラウドと真っ向勝負も NTT西の小林新社長、速さと安定性のエッジで対抗

2018.7.29 13:09

 NTT西日本が「エッジコンピューティング」と呼ばれる新たな通信技術で、米アマゾンなどのクラウドコンピューティングに対抗する姿勢を鮮明にしている。エッジは実際の通信インフラを持つNTTの強みを生かした技術で、ロボットの制御など無線通信での大容量データ処理でクラウドより優れたスピードや安定性を発揮できる。アマゾンが攻勢をかけるなか、両者のせめぎ合いが注目されそうだ。(黒川信雄)

 エッジ(末端)コンピューティングとは、遠く離れたサーバーに情報を集めるクラウドとは異なり、スマートフォンやロボットといったネットワークの末端側のサーバーで情報を処理することで、速度を大幅に高められる技術のこと。NTT西は現在、実証実験を進めており、早期の実用化を目指している。

 「アマゾンとの真っ向勝負もあるだろう」。6月22日に就任したNTT西の小林充佳(みつよし)新社長は、産経新聞のインタビューにそう述べ、エッジでアマゾンのクラウドに対抗する考えを鮮明に示した。

 小林氏には勝算がある。あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」環境が広がり、平成32年には次世代通信規格の「5G」サービスが日本国内でも開始されるなか、自動車やロボットの自動制御など膨大な量の情報を高速処理する技術が求められている。

 しかしサーバーが遠隔地にあり、情報が集中してネットワークに「負担がかかりすぎる」(小林氏)クラウドでは、処理が遅れるとの認識が産業界で広がっている。一方でエッジは、NTTが数キロおきに保有する通信ビルなどで情報を処理するため、スピードや安定性でクラウドに大幅に勝る。

 クラウドサービスを最大の収益源とするアマゾンは現在、日本国内で10万を超える顧客を持つ。関西でも事業拡大に意欲をみせており、6月には大阪で初となる、同社のクラウドサービスを紹介する大規模イベントの実施を計画した(大阪北部地震を受けキャンセル)。

 小林氏は一方で、顧客の要望に合わせてクラウドとエッジを組み合わせ提供する形も想定しているという。その場合は「アマゾンと組むこともあり得る」とも語る。

 エッジ、クラウドともに、今後の情報処理技術の成否を握るのが人工知能(AI)の活用だ。データなどが1カ所に集まるクラウドにはAIや専用ソフトウエアによる分析がしやすくなる利点もある。小林氏は、世界的にクラウドを展開するアマゾンが「非常に多くのAIのアルゴリズム(計算手法)を保有している」と語り、アマゾンが依然厳しい競争相手であることを認める。

 一方でNTT西は、不足が指摘されるAI人材をめぐり「(NTT西として)M&A(企業の吸収・合併)もあり得る」(小林氏)としており、その確保に手段を選ばない姿勢も示している。

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