【遊技産業の視点 Weekly View】来年は成長へ向けた変革の年に

2018.12.4 05:00

 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 パチンコホールの全国組織である全日遊連が毎月行っている組合員数調査で、10月の新規店舗数がゼロだったことが分かった。統計を開始して以来、新規店舗が1軒もないのは初めてのことだという。なお、営業店舗数は前月比59店舗減の9303軒であった。

 「新規店舗が1軒もない」という現状は、全日遊連でも危機感を持って受け止められており、さらに今後も新規則機への市場シフトによる負担が続くのに加えて、受動喫煙防止への対応や、消費税増税に向けた設備投資が控えるなか、中小零細ホールを中心に“先行き”に対する不安は募る一方だ。

 今年の遊技業界を振り返ると、「依存への対応に終始した1年」と総括することができる。2月の改正規則の施行をはじめ、依存相談窓口業務の拡充、昨年からスタートした「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」制度の運用拡充や、自己申告・家族申告プログラムの導入促進など、パチンコ・パチスロの依存対策は、産業および企業の社会的責任として「積極的に推進すべきもの」と位置付けられ、さまざまに取り組まれている。だが、先に触れた遊技機市場のシフトに伴う負担に加えて、依存対策にもコストが掛かる一方、遊技機の射幸性は抑制され、これまでより客単価が下がる営業環境を余儀なくされる実情。ファン拡大が一朝一夕でかなうはずもないなか、今後、ホール、メーカーと業種を問わず「これからの時代に適した経営」を迫られることになる。だが、それは「切る」とか「削る」とかネガティブな言葉やイメージのみで語られるものではない。経費の使い方、考え方において新たな価値基準を設けたり、遊技機の効率的運用に向け、メーカーとホールでさらなる協力を模索するなど、ここをクリアしていくことが、持続可能な成長を遂げる企業・産業の礎を築くことにつながる。

 新たにできるビジネスだけが成功や成長を推奨されるものではない。あらゆる産業が社会的責任を果たすことを前提に、成長・発展を目指すことが許されているなか、遊技産業も来年は「自らなりたい業界へ変わる1年」へと歩みを進める必要がある。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。

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