値引きだけでは限界 コンビニ悩ます「後ろから取る客」の存在

2019.5.26 09:03

 スーパーの鮮魚売り場や精肉売り場で、棚の奥に手を突っ込んで商品を取り出し、より新鮮なものを選ぼうとするお客を見かける。棚の前に残された消費期限切れが迫った商品は、廃棄を防ぐため閉店間際に値引き販売されるのが一般的だ。

 この「後ろから取る客」はコンビニにも存在するが、加盟店のオーナーにとっては悩ましい存在だ。消費期限が近づいた商品ばかりが棚に残ってしまうため、廃棄のリスクが高まるからだ。

 ローソンは5月17日、新しい食品ロス削減プログラムを発表した。現時点では実験的な取り組みだが、何げなく新しい商品を棚の奥から取るお客を減らす効果が見込めるかもしれない。

 ローソンの打ち出した方針とは

 ローソンは6月11日~8月31日までの間、食品ロス削減プログラム「Another Choice(アナザーチョイス)」を開始する。これは、消費期限が近い商品を購入したお客に対してポイントが付与されるだけでなく、満足に食事がとれない子どもたちに寄付が届く仕組みになっている。

 アナザーチョイスが実施されるのは、愛媛県のローソン(218店)と沖縄県のローソン(231店、いずれも2019年4月末時点)。朝と昼に納品されるおにぎりや弁当などの対象商品に、工場で「Another Choice」のシールが貼付される。

 Ponta会員とdポイントカード会員のお客が、夕方以降にその商品を購入すると、対象商品合計金額(税抜)に対して100円につき5ポイントが購入月の翌月末に付与される。また、対象商品の売り上げ総額(税抜)の5%が、貧困などに苦しむ子どもを支援する取り組みに対して寄付される。これらのポイントや支援金を負担するのは本部側だ。

 ローソンは愛媛県と沖縄県での実験結果を踏まえ、実験エリアを拡大し、施策をブラッシュアップしながら全国展開を目指す。さらに、売り上げ当たりの食品ロスを30年度までに50%削減(18年度比)する目標も掲げた。

 廃棄ロスを減らす取り組みはしてきたが…

 商品ロス問題に対し、ローソンはどのように取り組んできたのか。例えば、商品の発注システムを改良し、売れ残りが発生しにくいようにしてきた。また、商品の鮮度管理を徹底することでサラダや総菜などの販売時間を延長したり、店内調理品の値引き販売を実施したりしてきた。

 しかし、まだまだ十分とはいえない。その象徴的な商品がおにぎりと弁当だ。ローソンでは各店の判断で、おにぎりや弁当の値引き販売が行われている。しかし、食品廃棄を減らすという目的を達成するには「今までの値引きだけではうまくいかない」(ローソンの竹増貞信社長)という問題意識があった。加盟店のオーナーからも、おにぎりや弁当の廃棄を減らす取り組みを打ち出してほしいという声も上がっていたという。

 お客への意識改革につながるか

 もちろん、新しい商品から取っていく行為が悪いというわけではない。例えば、朝に購入したおにぎりを夜に食べたいと考えているお客が、食中毒のリスクを避けるため、消費期限を確認するのは仕方のないことだ。

 ただ、いつものクセでなんとなく棚の奥に手を突っ込んでしまうようなお客は、今回のキャンペーンを目にして食品ロスに対する意識が高まるかもしれない。キャンペーン期間中、おにぎりや弁当を並べる棚にはこのプログラムを告知するポップが展開される。そのポップを目にすることで、「子どもの支援のためならば……」と購買行動が変わるかもしれない。

 ローソンの実験は、食品ロスを減らすことにどれだけ寄与できるだろうか。

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