【5時から作家塾】やっかいな宅配便の「再配達」解消! 画期的なサービスが人気に

2019.5.29 07:00

 私たちの生活にすっかり定着したネット通販。その反面、浮上しているのが「再配達」の問題である。単身者や共働きなど、日中に不在の家庭が増えている。そうなると荷物を受け取れなくなり再配達になってしまうのだが、これが実にやっかいだ。

 再配達は時間を指定しなければならないし、家で待っていなければならない。業者側も何度も配達することで人件費がかかってしまう。コンビニ受け取りという方法もあるが、荷物の種類によっては、受け取りに行くのが面倒な場合もある。玄関に宅配ロッカーを設置する手段もあるが、場所を取るのでスペースのある家庭に限られてしまう。

 そこで最近、増えているのが「置き配」である。注文時に希望の「置き配場所」を指定すれば、玄関前等の指定場所に置いてくれる制度である。楽天やアマゾン、ファンケルなどが導入しており、少しずつ広まっている状態である。

 とはいえ、まだ置き配を行っている通販会社は少ない。そこで今、注目を集めているのが、置き配感覚で利用できる置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」である。これは13cm四方の折りたたみ式簡易宅配ボックスで、広げると最大32cm×46cm×29cmになる。宅配便の120サイズが入る容量だ。このバッグを玄関に取り付けておくと、配達員が荷物を中に入れて、カギをかけておく仕組みになっている。ポリエステルでできており、軽くて丈夫なのが特徴だ。配達員への説明カードが付いているので、初めてでもカードの説明に従って、荷物をバッグの中に入れておくことができる。

 昨年の9月に始まったサービスだが、便利で価格が3,980円と割安なこともあって、すでに1万2,000個が売れている。

 治安、玄関…「日本らしさ」アイデアにつなげる

 このサービスを立ち上げたのは、Yper(イーパー)株式会社という物流系ITベンチャー企業である。代表取締役の内山智晴さんは大学卒業後、大手商社勤務を経て、2017年に起業した。置き配バッグを考案した経緯を聞いた。

 「最近は日用品をネット通販で買う人が増えています。大半は高価な商品ではないので、必ずしも対面で受け取る必要はないと考えました。最初は宅配ロッカーを想定したのですが、コスト面で難しく断念しました。日本は玄関口がせまい家庭が多いこともあり、宅配ロッカー自体、あまり普及してないのが現状です」(内山さん)

 試行錯誤を重ねている時、出会ったのがあるエコバッグだった。

 「バッグなら折りたためますし、どんな家庭でも玄関先に取り付けることができるとひらめいたのです。そこでShupattoというエコバッグで有名な老舗日用雑貨メーカーと共同で、置き配用のバッグを新たに開発しました。外国に比べて日本は治安が良いので、バッグでも盗難等の可能性は低いと判断してのことです」(内山さん)

 バッグはYper株式会社のホームページで購入できる。また、専用のアプリと連動しており、配達されると通知される仕組みになっている。再配達になった場合もスマホから対応が可能だ。配送会社によってバラバラになっている情報をまとめて見ることができるので、非常に便利になっている。

 置き配はたしかに便利なサービスだが、気になるのは盗難の可能性だ。

 「盗難防止のため、玄関口にOKIPPAを固定する専用ロックと、バッグの開口部に南京錠をつけています。また、月額100円で東京海上日動火災保険と連携した盗難保険も含まれるアプリのプレミアムプランに加入することもできます。サービスを始めて9カ月経ちましたが、今のところ盗難保険を適用したケースはありません。置き配バッグを利用する方は、ミネラルウォーターや紙オムツ、トイレットペーパーといった日用品の購入者が大半です。そういった品物をわざわざ盗むのはリスクが高すぎる。このあたりも理由だと思います。もちろん高価な品物に関しては対面での受け取りをお勧めしています」(内山さん)

 「1日2億円」のムダ

 国土交通省の調査によると、昨年、国内では42億5100万個の宅配便が配送されている。日本人1人あたり33個という数字だ。配達員が運ぶ1日の荷物数は、1人あたり150個を数え、この内2、3割が再配達になっている。

 「国土交通省の数値をもとに弊社で試算した再配達コストは、宅配業界全体で1日に約2億円です。まさに無駄なものに費用をかけている状態です。このコストはいずれ配送料金の値上げという形で消費者に返ってくる可能性もあります。また、配達員にとっても何度も訪問するのは、非常にストレスです。人材不足も問題になっている物流業界ですが、現在のような状態では、配送員の負担も今後大きくなっていくでしょう」(内山さん)

 配送員の中にはOKIPPAのチラシのポスティングを自ら申し出るなど、再配達を減らすために積極的に協力をしてくれることも多いという。昨年の夏、東京23区内で行った実証実験では、置き配バッグによって再配達が4割減少という結果が出ている。

 現在は置き配バッグの販売・管理を主要業務にしているYperだが、今後はOKIPPAをインフラとした配送網を整備する計画を温めている。

 「コンビニ受け取りと同じようなスタイルで、再配達のない配送網ができないかと構想しています。通販会社、配送会社と共同で、再配達の必要がなく、よりコストのかからないネットワークができると考えています。誰もが得をするシステムを目指しています」(内山さん)(吉田由紀子/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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