日中でETF相互上場 中国マネー取り込みに期待

2019.6.25 11:20

 日本取引所グループ(JPX)と中国の上海証券取引所は25日、上場投資信託(ETF)の相互上場を開始した。資本規制の厳しい中国市場に日本株で運用する金融商品が上場するのは初めて。昨年10月に日中両政府で合意した金融協力強化の取り組みの一つで、27日に予定される首脳会談を前に実現にこぎつけた。

 日中両国のETF運用会社が提携し、提携先のETFにそれぞれ連動するETFを取り扱う。東京証券取引所には中国の株価指数に連動するETF2本、上海証券取引所には日経平均株価や東証株価指数に連動するETF4本が上場した。

 中国では、国境をまたぐ証券投資が厳しく制限されている。三菱UFJ国際投信やアセットマネジメントOneなど、この枠組みに参加する運用会社は中国当局から特別な投資枠を認められ、互いにアクセスが可能になった。

 日本のETF市場で株価を下支えする日本銀行の存在感が際立つ中、新たな買い手として中国の個人投資マネーの流入に期待が高まる。上海に上場した4本のETFは事前の募集に対し、約240億円分の応募があったという。ある市場関係者は「想定の10倍の規模だ」と驚く。

 日本の金融機関にとっては、中国に本格進出を果たすよりも手軽に中国市場に参入できるメリットがある」(三菱UFJ国際投信の佐々木康平氏)。また日本の投資家は成長性の高い中国株に投資しやすくなり、投資対象の選択肢が増える。

 JPXの清田瞭(あきら)最高経営責任者(CEO)は25日、東京証券取引所での記念式典で「ETFが架け橋となって、日中資本市場を相互に結びつける。大きな可能性を秘めた偉大な一歩だ」と述べ、両国の証券市場の活性化に期待感を示した。

 ETFの相互上場は、米中貿易摩擦が激化する中、日中間の協力関係をアピールしたい両当局の思惑もあって短期間で実現した。今年3月には、野村証券が中国当局から過半出資の合弁証券会社の設立認可を受けるなど、日中の連携は加速している。

 金融庁の遠藤俊英長官はこの日の式典で「中国との金融協力を通じて、両国投資家の投資機会の拡大、両国金融市場の活性化とともに、中国金融市場の海外開放や国際化の面でも貢献していきたい」と語った。

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