国境離島旅行に5000円補助 政府検討 GoToとの併用も

2020.12.7 18:14

 主要産業の観光業が新型コロナウイルス禍で打撃を受けている長崎県・対馬など、国が「特定有人国境離島地域」に指定している15地域・71島を目的地とした旅行商品について、政府が一人一泊5千円の支援策を検討していることが7日、分かった。令和2年度第3次補正予算案に盛り込む。15地域への支援には、観光業を後押しすることで離島の無人化を防ぎ、領土保全を強化する意味合いもある。

 支援策は旅行商品を企画した事業者を経由し、旅行者が5千円分の割引を受けられる形を想定する。政府は交付金制度を通じて毎年、滞在型の旅行商品などに関して観光支援を実施しているが、ダイビングツアーを盛り込むなどの条件がある。今回の支援策ではそうした条件をなくすほか、政府の観光支援事業「Go To トラベル」と併用できる仕組みにする方針だ。詳細は今後詰める。

 離島の各地域の主要産業であるケースが多い観光業では、新型コロナの感染拡大が広がる中、客足が減少している。政府は離島への旅行を促進することで、地元経済の下支えを図る。離島は医療体制が脆弱なため、感染防止策への目配りも必要になる。

 15地域71島は平成28年4月に国境近くの離島振興を目的に成立した「有人国境離島法」に基づき、特定有人国境離島地域に指定されている。対象地域は中国が一方的な海洋進出を続ける東シナ海に位置する鹿児島県・トカラ列島や韓国との国境に接する長崎県・対馬などが含まれる。

 離島には無人島も多いことに加え、住民のいる島でも無人化が進めば管理がより難しくなることから、政府関係者は「人が島で社会生活を営んでいることは領土・領海保全の意味では、非常に重要だ」と指摘する。政府は29年に創設した交付金制度を通じ、旅行商品の宣伝や販売促進費などの一部を補助している。

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