インドネシアで日本の社会貢献アピール好機 森林の生態系修復とCO2排出削減を

論風

 □地球環境戦略研究機関特別研究顧問・浜中裕徳

 ■日本企業の取り組みに支援を

 インドネシアは近年経済発展が著しく、生活水準が向上し、消費が増大している。日本企業にとっては、生産拠点というよりも巨大な市場として重要性を増しており、現地のパートナー、消費者などとの良好な関係を築き維持することが一層重要になっている。

 他方、インドネシアでは経済開発の進行に伴い、熱帯雨林が伐採、土地利用転換、大規模な火災などにより急速に減少、劣化しており、残された森林の維持、保全のための取り組みが進められている。

 62万ヘクタールで経済活動

 インドネシア政府はパリ協定の下で温室効果ガスの排出削減を約束しており、2030年に成り行き排出量から独力で29%、国際協力を得て41%削減するとしている。とりわけ、インドネシアにおいて森林部門は現在最大の温室効果ガス排出源であり、削減目標達成において大きな役割を果たす必要がある。そして、森林を保全し劣化した生態系を修復することは、二酸化炭素(CO2)排出削減はもとより、インドネシア国民が世界に誇る美しい自然と生物多様性の保全に貢献する。

 そこで、本稿では減少・劣化が進むインドネシアの森林において、企業や非政府組織(NGO)の参加を求め、生態系修復を進めようとする取り組みを紹介したい。

 この制度は「生態系修復コンセッション」と呼ばれ、劣化した国有天然生産林の生態系を修復、保護、維持することを目的に、その一部をインドネシア企業に最長60年間貸与し、木材生産やプランテーション開発以外の、炭素吸収・貯蔵など生態系サービスの活用、また、木材以外の林産物や薬用植物の生産、エコツーリズムといった経済活動を行わせるもので、04年から導入された。

 16年までに合計62万ヘクタール余りの国有林に対し、16のライセンスが発行されており、NGOが設立した企業体によりオランウータンなどの野生動物の保護や野生復帰などの事業を行っているもの、紙パルプ生産企業などがCSR(企業の社会的責任)活動として取り組んでいるもの、泥炭湿地林において自社で削減しきれないCO2を外部への投資で相殺するカーボンオフセット・クレジットを発行しているものなどがある。

 日本企業がライセンス所有企業とともに、自主的カーボンクレジットの取引、森林モニタリング技術の開発などを行った例もみられている。

 ライセンス所有企業は、広大な天然林を持続可能な形で利用する法的な権利を有し、長期の管理計画に基づいて経営しているため、熱帯雨林の保全、持続可能な管理のための新たな技術・ビジネスモデルの開発に関心がある国外の企業・団体にとっては、コンセッションにおける事業に協力すると、その終了後も森林とその生態系が維持される可能性が高く効果的と考えられ、理想的なパートナーといえる。

 社会貢献アピールの好機

 インドネシア政府はコンセッション事業に多くの企業・団体からの投資を呼び込むべく制度の拡充を検討しており、関係者は今後、生態系修復コンセッションが増えると予測している。

 多くの日本企業はカーボンクレジットの取得により自社の排出をオフセットすることに関心があると思われる。しかし、インドネシアでビジネスを進めようとする企業にとっては、こうした生態系修復コンセッションでライセンス所有企業などと協力し、貴重な森林の生態系修復と絶滅の危機にひんした野生生物保護や、最新技術を活用したモニタリング手法など森林管理技術の開発・適用に取り組むことは地元社会への貢献をアピールし、自社のイメージを高める上で非常に重要なのではないだろうか。こうした日本企業による取り組みが進めば両国間の友好関係の深化に貢献し得る。政府や研究機関には、こうした取り組みが進むよう、適切に支援することを期待したい。

【プロフィル】浜中裕徳

 はまなか・ひろのり 1969年厚生省(現厚生労働省)入省。環境省地球環境審議官を経て2004年退官。07年4月から17年6月まで地球環境戦略研究機関理事長、同年7月から現職。73歳。東京都出身。

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