日本に1台しかない「レッドサラマンダー」 過酷な現場で活躍、土砂・瓦礫乗り越え被災者救助

 
九州豪雨災害を受け、7月7日に被災地で活動するレッドサラマンダー。消防車では越えられない土砂を軽々と踏破する=大分県日田市

 身をくねらせ被災地をゆく赤いボディー 1台1億1千万円

 散乱するがれきや浸水地域を越えて、一刻も早く被災者へたどり着きたい-。

 ファインダーの向こうで、真っ赤なボディーのキャタピラー車が身をくねらせ、道路をふさぐ土砂やがれきを乗り越えていく。日本に1台しかない全地形対応車「レッドサラマンダー」だ。

 東日本大震災をきっかけに消防庁が購入。平成25年、南海トラフ地震の被害が想定される、愛知県岡崎市消防本部へ配備された。

 軍用車両などを製造するシンガポールの「STキネティックス」が製造。日本では、消防車の開発や製造を行う「モリタ」が販売し、価格は1億1千万円という。

 60cm段差乗り越え、26度の斜面を登る 最高時速50km、水中も走行

 ゴム製のキャタピラーで走行し、60センチの段差を乗り越え、26.6度の斜面を登ることができる。定員は前部4人で後部が6人。長さ8.72メートル、幅2.26メートル、最高時速50キロで、水深約1.2メートルまで走行可能。

 初出動となったのは、7月の九州豪雨で大きな被害を受けた大分県日田市。

 「『ついに来た』という感じ。初めての現場は緊張感がありました」。岡崎消防本部の河合篤主査(36)は振り返る。

 現地では佐賀や大分などの消防隊とチームを組んで活動した。当初は実績ゼロのため隊列の最後尾を走らざるをえなかった。

 過酷な現場でこそ真価 失敗できないプレッシャーのもとで悪路走破

 しかし、孤立集落への出動時、他の車両が立ち往生する過酷な現場で、全地形対応の真価を発揮する。

 「『行かせてくれ』と手を挙げました。行かないとそこが限界になってしまう」と河合さん。

 失敗できないプレッシャーの下で悪路を走破し、その実力を証明する。「ここを乗り越えたのが、現場での印象を変えたターニングポイントだった」といい、次の出動からは、隊の先陣を切るようになる。

 宮碕孝直消防指令補(40)は「あくまで人命救助のひとつの方法」と控えめにいう。多くの被災者を救うためには、選択肢は多い方がいい。しかし、レッドサラマンダーの九州での活躍は、大きな実績となったに違いない。

 レッドサラマンダーのナンバープレートに刻まれるのは「33」。キャタピラーが切り拓(ひら)く未来は、燦々(さんさん)と輝くものであってほしい。

(産経新聞社 写真報道局 安元雄太)