インドネシアのAPP、自生種1万本植樹で自然林を再生

 
汗を流して森林再生に向け植樹活動に力を入れる日本の一般ボランティア(長谷川周人撮影)

 持続可能な循環型経営を軌道に

 自然林伐採ゼロを国際誓約したインドネシアの総合製紙メーカー、アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(APP)が、自然林の保全・再生活動を着々と進めている。2014年に動き出した植樹プロジェクトは今回で4回目となり、8月7日に行われた植樹イベントには、日本全国から幅広くボランティアを集めた。世界最大級の生産能力を誇るグローバル企業として同社は、生態系の回復と持続可能な開発の両立を目指し、成果を重ねて地球規模の森林保護を呼びかけようとしている。(インドネシア・スマトラ島リアウ州 長谷川周人)

 日本人ボランティアも植樹に参加

 APPはインドネシア最大の総合製紙メーカーで、輸出先は150カ国・地域を超えて世界総収入は約1兆5000億円。その発展の過程でAPPは、「一貫して合法的な運営を行ってきた」と主張するが、自然林を原料の一部にしてきたことから、環境保護団体から「森林破壊に加担した」と厳しい批判を受けた。このためAPPは持続可能な開発には資源循環型経営への転換が不可避と判断。13年に自然林の保護を目的とした「森林保護方針」を発表。関連するサプライヤーを含め、自然林伐採を即時停止した。

 「9000年続く命の森を世界に発信していこう」(宮脇昭・横浜国立大学名誉教授)。経営の抜本改革に動くAPPの要請を受け、植物生態学の世界的権威の宮脇教授は、スマトラ島リアウ州で同社が管理する森林を調査。域内の自然林では「外来種ではない、土地本来の樹種を育てるべきだ」と呼びかけた。

 製紙原料となる植林地とは異なり、自然林の育成は環境保全が目的であり、経営資源にはならない。しかし、APPは世界の製紙業界をリードするグローバルカンパニーとして、テグー・ウィジャヤ会長は「単なる利益追求ではなく、環境保全と両立する経営環境をつくらなければ、企業は生き残れない」と言明。自生種で自然林を再生する「1万本植樹プロジェクト」をスタートさせた。

 熱帯雨林の保全・再生プロジェクトも前進

 毎年1万本の自生種を植樹する壮大な計画で、16年からは日本人ボランティアによる植樹も始まった。自然林伐採ゼロを国際誓約した「森林保護方針」の発表から5年目。同社のステークホルダー・エンゲージメント担当部長、ネグラサリ・マルティニ氏によれば、多くのステークホルダーとの連携により、APPはインドネシアで保護・再生対象となる10カ所の森林エリアのうち、5カ所の最重要地域を特定することができたという。

 「巨大企業が環境に優しい経営に舵を切るのは並大抵ではなく、ある種のジレンマもあるはず。しかし、それはあらゆる企業の責任でもあり、汗を流して森林保全・再生を実践するAPPの環境対応を若い世代に見せていきたい」。APPの植樹イベントにボランティア参加した鎌田安里紗さんは、今回の植樹活動をこう振り返る。

 植樹イベントで国連の条約機関、国際熱帯木材機関(ITTO、本部・横浜市)のマ・ファンオク・プロジェクトマネージャーは、「われわれはさらなる行動が必要だ」とハッパをかけた。日本環境ビジネス推進機構の神谷光徳理事長も、「1本の木が2本となり、やがて貴重な森になっていく。植樹を進めて自然と地球を守ろう。活動の先頭に立ったAPPの決断は意義深く、またその使命は重い」と訴えた。

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