民生分野で広がる「顔認証」 賃貸住宅にも登場 東京五輪控え導入機運高まる

 
積極認証と異なる非積極認証への対応技術紹介(フィジカルセキュリティーNECより転載)。(C)NECCorporation1994

 両手に荷物を持っての帰宅。どう解錠しようかと、戸惑った経験は誰にでもあるのではないだろうか。そんな時にも、顔をカメラに向けて近づけるだけで瞬時に解錠することができるのが顔認証システムだ。

▽民生分野への普及が始まった顔認証

 鍵はもちろんのこと、ICカードなども不要だ。これらを持ち歩くことも、また紛失して困ることもない。誰がいつ入退出したのかのログも記録される。これは夢のような話ではない。

 すでにオフィスなどの施設では導入がすでに始まっているのだが、先ごろには、ついに顔認証のみでエントランスの解錠が可能な賃貸住宅が竣工した(レオパレス21の「LOVIE 麻布十番」)。今後、民生分野への顔認証システムの導入は加速していくことだろう。

 仕組みの概要はこうだ。居住者は顔写真をシステムに登録しておく。解錠の際に顔をカメラに向けるとシステム側で顔を検出し、登録された顔写真と照合して、居住者と認識されればオートロックのドアを解錠する。クラウドで接続された管理側からは遠隔解錠や映像のリアルタイムモニタリングも可能だ。

 この仕組みは、出入国管理など国家レベルのセキュリティー管理に使われる実績のあるNECの顔認証AIエンジン「NeoFace(ネオフェイス)」を用いている。さらにインターフェイスにタブレットPCを使うことで入出力を容易にし、クラウド上に認証サーバーを置くことで施設側の負担を減らしているところもポイントでもある。

▽日本の動画顔認証の技術は世界一、しかし国内での普及に遅れ

 この顔認証技術において日本は世界のトップを走っていることをご存知だろうか? 例えば、前述のNECのNeoFaceは、世界的権威のある米国立標準技術研究所による初の動画顔認証の評価プログラムにおいて最高評価を獲得するほどだ。NECにおいては、約40カ国での実用導入例-空港における出入国管理や重要施設でのセキュリティー、スポーツイベントやコンサートでのチケットレス入場、サッカー場での当局にマークされているフーリガンの発見など-がある。その一方で、日本国内での導入は未だ多くが実証実験段階であり、顔認証技術の実際の導入・活用は大きく遅れを取っている。

 その理由の一つはセキュリティー意識とプライバシーの意識のアンバランスさにある。「安全神話」とも揶揄される危機意識の低さと、安全性よりも個人情報を取られることに対する拒否感を優先する風潮がその妨げになっている。

 ところで、顔認証技術には静止画顔認証技術と動画顔認証技術とがあり(NeoFaceはその両方に対応している)、オートロックの解錠には静止画顔認証の技術が使われている。対して、大規模施設等での入退出管理や危険人物の検出などに必要なのは動画顔認証技術だ。

 静止画顔認証が本人の意志で行う「積極認証」であるのに対して、動画顔認証は「非積極認証」であり、本人が意識しない状態・場所で認証される。このような仕組みに対して拒否反応を持つ傾向が日本国内にはある。セキュリティー確保とプライバシー保護にはトレードオフの一面があるが、日本ではプライバシー保護に過剰に傾くために、導入に拍車がかからなかったのだ。

▽これからの日本社会に欠かせない動画顔認証技術

 この状況下で、海外での導入事例のように日本国内でも動画顔認証の導入を早急に進めるには、必要な施設への設置がしやすくなるような、また過度にプライバシーが脅かされることのないような法や制度の整備も必要だ。それでも、成田、羽田、中部、関西の4空港での日本人の出入国審査において、2018年度中の顔認証技術で本人確認する自動化ゲートの本格運用を目指す方針を法務省が明らかにするなど、ようやくその導入の機運は高まってきた。

 それはその必然性とともに早急な設置が必要となっているからだ。つまり、現状でも訪日客の増大傾向があり、さらには19年のワールドカップラグビー開催、そして20年の東京オリンピック・パラリンピックの開催で訪日客のピークを迎えるからだ。その背景には国際テロの脅威もあり、大規模施設等での認証業務効率化とセキュリティーレベルの向上との両立には動画顔認証が不可欠だ。

 日本は超高齢化社会となり、人口減を補うだけの業務の効率化が喫緊の課題だ。顔認証はその一つの回答だ。民生分野での静止画顔認証普及が顔認証に対する意識改革のきっかけとなれば、これまで遅れていた大規模施設等での動画顔認証の導入により弾みがつくのではないだろうか。(中田アキラ/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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