「希望の党」は希望をもたらすのか

社説で経済を読む
自らが代表を務める「希望の党」を設立し、記者会見する東京都の小池百合子知事=9月27日、東京都内のホテル

 □産経新聞客員論説委員・五十嵐徹

 22日に投開票される衆院選に向けて、小池百合子東京都知事が国政新党「希望の党」を結成し、自ら代表に就くと発表した。知事職は続けるという。

 安倍晋三首相が解散を表明した同じ日に緊急記者会見をぶつける得意の「小池劇場」で、会見後には小泉純一郎元首相との会談をセットして連携をにおわす周到な演出も見せた。

 毎日は9月27日付社説で「小池氏の勝負勘と度胸のなせるわざ」と皮肉も込めて持ち上げたが、「民主的な党運営とは無縁のスタート」(同日付産経)とする批判も少なくない。側近の若狭勝前衆院議員らが積み上げてきた綱領、政策などの議論は簡単にリセットされた。

 小池氏は記者会見で、「日本は改革のスピードがあまりにも遅い。私自身が立場を明確にし、勢いをつけたい」と強調したものの、舞台裏を知らされていない国民は、きつねにつままれた心境だろう。

 ◆不可解な立党の精神

 7月の都議選に続き、発信力にたけた小池氏が再び新党の前面に立つことで、選挙の行方はますます混沌(こんとん)としてきた。解散にあわせて民進党が事実上の解党を決め、小池新党に合流するサプライズも加わった。野党再編が一気に進む可能性がある。

 首相が冒頭解散に踏み切った背景には、「新党の準備が整わないうちに」という計算があったのは間違いないが、その裏をかくような大胆な動きには自民党の二階俊博幹事長も「影響は大いにあるだろう」と警戒と戸惑いを隠せなかった。

 小池氏は「政権選択選挙」と位置づけ、新党の候補者は「3桁にはなる」と述べた。政権取りへ真っ向勝負を挑む構えだ。

 とはいえ、「希望の党」には、政治経験が乏しい新人や、現状では当選が難しいと考えた民進党など既存政党の出身者が多数を占める見通しだ。新党が小池人気に依存した「駆け込み寺」(27日付読売)と揶揄(やゆ)されるのもこのためだ。

 政策も独自性に乏しい。小池氏は、議員定数や報酬の縮減、女性の活躍推進、地方分権の確立、原発ゼロ-などを示したが、いずれも新味を欠く。実現への具体的道筋は示せなかった。

 小池氏は新党の立ち位置について、「社会の分断を包摂する寛容な改革保守政党を目指す」と語ったが、「得心のいく人がどれほどいるか」(28日付朝日)。

 「原発ゼロ」は、安全性が確認された原発は再稼働するとした安倍政権への対立軸だろうが、産経は「電力の大消費地・東京のトップとして、安定的な電力供給を確保する責任についてどれほど認識しているのだろうか」と問いかけた。

 憲法改正については、「議論を避けてはいけない」と否定しなかったが、改憲内容の具体性は乏しく、9条改正にも明確な見解を示さなかった。

 側近の若狭氏は、「一院制」を政策の柱に据えるとしていた。当然、改憲を伴うが、これにも小池氏は触れずじまいだった。

 首相は、憲法改正では小池新党に期待している節もある。安倍氏が「希望というのは良い響きだ。フェアに戦いたい」とエールを送ったのも、選挙後の協力をにらんだ秋波とも受け取れよう。

 政権選択を訴える政党の代表が都知事のままで選挙戦に挑む「二足のわらじ」にはやはり「違和感を禁じ得ない」(28日付日経)。東京五輪・パラリンピックや豊洲市場問題など課題山積の都政がおろそかになるなら、無責任のそしりは免れない。

 小池氏は、日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事を例に「都政に磨きをかけるには国政への関与が必要だ」と語るが、一層の説明が求められる。

 突然の衆院解散で結党を急いだ事情は理解できるが、何を目指す新党かを含め、有権者に示す必要がある。イメージ先行では責任政党とはいえない。

 ◆気になるメイ氏の轍

 気になったのは米紙ウォールストリート・ジャーナルの26日付の社説で、「安倍首相は早期解散で勝負をかけたが、英国の下院選で思惑外れの議席減を招いたメイ首相の二の舞いになりかねない」と述べている。

 同紙は、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する毅然(きぜん)たる姿勢を評価しつつも、「安倍氏の賭けは、強さというより弱さの表れだ」と述べ、小池氏がカリスマ的人気で自民党を乗っ取る可能性にも言及している。

 むろん、その可能性はゼロとまでは言えないが、メイ氏を例に「危険なのは、新たな信任を求める明確な理由を示さない指導者には、日本の有権者も背を向けるということだ」という指摘には首相も心すべきだろう。

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