正露丸やBMWの“あの音”が持つ重要な役割 「音商標」でCM音初登録

高論卓説
BMWのオフィシャル動画(キャプチャ)

 特許庁より先月26日、「音楽的要素のみからなる音商標について初の登録を行いました」という発表があった。

 具体的には、(1)ラッパのマークの正露丸(2)インテル(3)BMW-などのコマーシャルの際に流れるあの音楽などである。これら3件の音楽が登録された。音楽は特許庁のリンク先で聞くことができる。https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/otoshouhyou-hatsutouroku.htm

 勘違いする人も多いかもしれないが、既に音商標の一部については登録になっており、今回の登録も含めると、9月19日時点では、既に172件の音商標が登録されている。では何が違うのかというと、これまでに、例えば、久光製薬の「ひ・さ・み・つ♪」や小林製薬の「ブルーレット・おくだけ♪」などが登録になっているが、これらは音楽と言語的要素が組み合わさっている。今回登録になったのは、あくまでも「音楽的要素のみからなる音商標」である。音楽的要素とは「メロディー、ハーモニー、リズム又はテンポ、音色など」で、今回登録になったのは言語的要素がない音楽的要素だけのものである。

 以前は、文字、図形、記号又は立体形状か、あるいは、これらの組み合わせしか商標権の対象とはならなかった。しかし、2015年4月に施行された改正商標法では、時代の変化や諸外国の制度に合わせる形で、「音商標」「動き商標」「ホログラム商標」「色彩のみからなる商標」「位置商標」といった商標も一定の要件を満たせば登録されることになった。

 「音商標」は、識別力がなければ、登録にならない。音楽的要素と言語的要素からなる「音商標」の場合、言語的要素の部分に識別力があればよい。会社名(ひさみつ)や商品名(ブルーレット)などであれば、識別力が認められるのが通常である。ただし、一般的な商品名(電話など)には識別力がない。これに対し、音楽的要素のみからなる「音商標」の場合、音楽的要素に識別力が備わっている必要がある。

 つまり、需要者からして、「あの音ね」といわしめる程のものでなければならない。これは言ってみれば、当然のことである。商標は、特許や意匠と異なり、登録料を納付し続ける限り更新できるから、永久に効力が発生する。侵害となれば、使用を止めさせたり、あるいは、損害を賠償するよう求めたりすることが可能となる。したがって、何の識別力もない音に登録を認めてしまうと大変なことになってしまう。

 さて、このような「音商標」の今後の重要性について少し触れておこう。有名なCM音が他社に侵害された場合、音商標という制度がなければ、侵害を立証することはそれほど簡単ではない。不正競争防止法という制度を使えば、同じような主張はできるが立証のハードルが高い。著作権という手もあるが、有効期間が限られているなどの問題がある。

 昔と違って、紙媒体が減り、映像媒体が増えていることもあり、音も「ただ乗り」される危険性はそれだけ増えることになる。また、音だから、言語を超えたブランド発信手段として、海外展開の際の企業のブランド戦略にも大きな役割を果たすと思われる。今後もますます登録事例が増えていくことであろうが、どのように活用されていくのか注目したい。

【プロフィル】溝田宗司

 みぞた・そうじ 弁護士・弁理士。阪大法科大学院修了。2002年日立製作所入社。知的財産部で知財業務全般に従事。11年に内田・鮫島法律事務所に入所し、数多くの知財訴訟を担当した。17年1月、溝田・関法律事務所を設立。知財関係のコラム・論文を多数執筆している。40歳。大阪府出身。

Read more