(2)毛利衛日本科学未来館館長に聞く

SCWS2017

 □SCWS2017国際組織委員会委員長

 ■グローバルな課題解決に貢献

 11月にアジアで初めて開催される世界科学館サミット(SCWS)は3年に一度開かれる国際会議。以前は科学館相互のコミュニティー強化に重点を置いた会議だったが、前回ベルギーでのSCWS2014からビジネス界や行政、研究者らを交えた、新しい形の会議へと生まれ変わった。今回サミットを主催する日本科学未来館の毛利衛館長に会議の意義や役割などについて聞いた。(伊藤俊祐)

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 -今回の科学館サミットの目的は何ですか

 「従来とは異なる科学館の役割や行動指針を打ち出していくことです。世界では、気候変動やエネルギー問題、感染症、サイバーセキュリティー上の脅威など、科学技術をベースに考えていくべき問題が急増しています。こうした問題の解決に向けては、一般市民が科学技術により深く関わっていくことが不可欠になっています。いま世界中の多くの科学館では、これらグローバルな課題について来館者と語り合い、それぞれ一人ひとりの行動に変化を与えようという取り組みが行われています。地球規模課題の解決に貢献していくのが、新しい科学館の役割なのです」

 -こうした目標に向けた各地域の科学館の足並みはそろっていますか

 「かつては米国や欧州の科学館でも、その地域のコミュニティーへの貢献を重視し地球全体のことは深く考えない傾向がありました。ですが、人類全体のサステナビリティに科学館としてどう貢献していくか、という考え方は、近年大きな流れになっています。世界中には、約3000の科学館があり、年間3億1000万人以上の方が訪れています。科学館が足並みを揃え、同じ目標を目指すことは大きなインパクトを持ちます。今年6月には、グローバル・サステナビリティに対する市民参加をさらに推進していくための行動指針「東京プロトコール」が世界の科学館の代表者たちにより合意されました。日本科学未来館では2001年の設立時から、未来のグローバルな課題解決を最重要視しています。その意味で、未来館が主導する形で今回の科学館サミットを開催する意義は大きいと思います」

 -科学館は他の業界組織と連携した、新しいモデルへの変革を目指しています

 「いま多くの企業で、SDGsへの取り組みが行われています。『科学館がサステナビリティのために何をしているのか』『どんなふうに貢献したいと思っているのか』といった部分を理解してもらったうえで一緒に取り組んでいけば、問題解決への飛躍的な進歩につながる可能性を感じています」

 -アジア・大洋州としてはじめて科学館サミットを開催する意義は

 「アジアの科学館同士は自然観が共通しています。一方欧米の科学館は、自然は人間の都合でコントロールできるという考えをしがちです。『そうではない』というのが、これまでのサミットとは異なる発想だと思っています。人間を自然と対峙させず一部として捉える、そんなアジア的な自然観の必要性を改めて伝えていきたいですね。そして、ビジネスや政治の世界でもアジアの存在が大きくなり、アジア全体に勢いがあるということも支えになっています。とくに中国とインドへと向かう動きは勢いを増していますね」

 -中国の科学館をめぐる動きは活発化していますか

 「100万人以上の都市には1つ以上の科学技術系博物館を設置することとなっており、今でも年々増えています。人口によってその規模は異なりますが、最も大きなものは北京と上海、広州。この3つの都市には未来館の数倍の規模にもなるような施設を開設しています。科学技術は国家の経済発展に欠かせないという明確なビジョンをもっていて、その勢いはものすごいものがあります」

 -科学技術の分野で日本が果たすべき役割は何でしょうか

 「日本の科学技術を人類全体のサステナビリティに生かしていくことです。すでに実用化している技術はもちろん、今後の技術開発でも国際連携を推進し全地球的に取り組んでいくことが肝要です。一方、日本国内に目をむけると物質的には十分なレベルに達しているといえるでしょう。これからは単なる利便性や効率だけでなく、個人の満足や充足感につながる科学技術を目指すべきです。日本だからこそ生み出せる科学技術の方向性を示し、世界に発信していくことが必要です。日本は科学技術の分野で先を進むチャンスがあり、サミットでも存在感を発揮したいと思っています」

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【プロフィル】毛利衛

 もうり・まもる 1985年に北海道大学助教授から日本初の宇宙飛行士に選ばれ、宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)に。92年NASAスペースシャトル「エンデバー号」に科学技術者として搭乗し宇宙実験を行った。2000年にはシャトルの運用に携わるミッションスペシャリストとして2度目の搭乗を果たす。2000年10月から現職。69歳。北海道出身。

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