受付嬢から社長になってよく聞かれることは… また不思議なご縁、今度は「スゴ腕の学生」

 
橋本真里子さん

元受付嬢CEOの視線

 こんにちは。ディライテッドCEOの橋本真里子です。第3回では、「受付嬢」と「ITベンチャー社長」の二足のわらじを履きながら、資金調達や仲間集めに奔走していた起業当初についてお話しました。起業してからは資金の集め方についてよく質問を受けますが、もうひとつ決まって聞かれることがあります。それは、プログラミングの経験がない私が「どうやってクラウド型受付システムを作ったの?」という疑問。

 受付嬢だった私と起業が結びつかないのと同じくらい、私がそういったプロダクトを作るビジネスを選んだことも結びつかないですよね。実は、そこでも“運命の出会い”があったんです。

人材不足でも「なんとか5人のエンジニアを!」

 何度も言いますが、私にはプログラミングの知見が全くありません。それならばエンジニアを雇えばいいじゃないか、という単純な話でもないのです。なんの知識もない私がいきなりエンジニアを採用して一緒に仕事を始めるということは、「それぞれの母国語しか話せない外国人同士が一緒に働く」ことに等しいのです。お互いが自分たちの言葉でしか伝えられない、相手の言葉が分からない…それぐらい意思疎通が難しいのです。

 ところが、前回登場したプロダクトマネージャーの真弓貴博が仲間になってくれたことで状況が変わりました。プロダクトの責任者として、エンジニアとともに企画、開発、リリースを進めなければならない彼は、私とエンジニアの間に立つ“通訳”になってくれるのです。橋渡し役が見つかった次は、いよいよエンジニア探しです。

 …といっても、世の中にはさまざまなエンジニアがいるのをご存知でしょうか。 例えば「サーバーサイドエンジニア(サーバー側で行う処理のプログラムを開発する)」「フロントエンドエンジニア(ユーザーの目に触れる部分のプログラムを開発する)」「Androidエンジニア」「iOSエンジニア」など、役割やポジションの違いによって細かく職種が分かれます。弊社の場合は、「Androidエンジニア」以外は全て必要でした。

 いま、エンジニアの採用は非常に難しいと言われています。企業のIT化が進み、採用市場では人材の争奪戦が繰り広げられているからです。そんな中、弊社は5人のエンジニアの獲得に成功しました。IT人材が枯渇している状況で、なぜ彼らを採用できたのか。ずばり「リファラル採用」が奏功しました。

スゴ腕「学生CTO」との出会い

 リファラル採用とは、社員の人脈を活用して適任者の紹介や推薦につなげるリクルーティング方法です。弊社CTO(最高技術責任者)との出会いは、私がGMOインターネットで受付をしていたことがきっかけでした。一般的に、エンジニアの採用が難しい場合は、システム開発を受託している企業に依頼するケースがままあります。

 私が以前受付をしていたGMOインターネットグループには、システム開発を受託している会社がありました。受託開発も手段の一つとして考えていた私は、そのグループ会社の方に相談に行ったのです。残念ながら、その会社では、弊社サービスで使っているプログラミング言語に対応していなかったためシステム開発を受けてもらえませんでした。しかし、「その言語が得意なエンジニア集団がいますよ」と、個人的な知り合いを紹介してもらえることになったのです。

 早速、真弓とともに会いに行きました。それが、現在も学生の宗岡亜成との運命の出会いでした。真弓はたった2回の打合わせで彼の才能を見抜き、受託開発をお願いすることを決めました。宗岡は「やろうとしていることが明確で面白い。そして必ずニーズがある。働いているメンバーも非常に面白く、楽しんで開発できそうだ」と快諾してくれ、彼の仲間と2人で開発に臨んでくれました。

 宗岡らは「サーバーサイド」「フロントエンド」のエンジニア。残りの一人、iPadのアプリを開発する「iOSエンジニア」は、もともと真弓が一緒に仕事をしていたメンバーが手伝ってくれることになりました。いずれも受託やお手伝いといったスタートでしたが、最終的には3人とも入社を決めてくれました。

 こうして弊社のエンジニア体制の土台ができました。彼らは私にとっても会社にとっても貴重な財産です。さらにまとめ役の真弓が率いることで、弊社の開発軍団はとても頼もしい存在となりました。どうしたものかと頭を抱えるところだったエンジニア探しは、幸運なことにすんなりと進んだのです。

「私にはコードは書けないけど…」 また不思議なご縁も

 もうひとつ、弊社のクラウド型受付システム「RECEPTIONIST」の誕生に大きく関わるお話があります。それは、あるハッカソンで生まれた「→Kitayon(キタヨン)」という受付システムが前身になっているというお話です。

 キタヨンは、飲食店向けの予約管理サービスを手掛けるトレタ(本社・東京都)でCTOを務める増井雄一郎さんら有志のエンジニア集団によって開発されました。ハッカソンでは優秀賞を受賞。当時はまだ受付嬢だった私ですが、起業に向けた事業内容は決まっていたので注目していました。しかし、キタヨンが本格リリースされたというニュースは目にすることなく、時間は過ぎていきました。

 それから約一年。私が起業してから初めて参加したイベントに、トレタCOO(最高執行責任者)の吉田健吾さんが参加していたのです。これも不思議なご縁なのですが、実は吉田さんも元々GMOインターネットのグループ会社に在籍していました。久しぶりに再会し、起業したことを話しました。そしてキタヨンはどうなったのか現状を伺いました。「同じタイミングで同じようなプロダクトを作るのであれば、何か協力し合えないか」と私は考えていたのです。

 聞くところによると、トレタではキタヨンをサービス化することが難しい状況にありました。「それならば、弊社で開発を引き継がせてもらえないでしょうか!?」

 その後、トレタの中村仁社長とキタヨン開発者の増井さんにお会いし、この受付システムの原型となるソースコードを弊社で引き継がせてもらえることになりました。

 開発速度が進んだことはもちろん、業界の大先輩である中村さんや増井さんからはサービス、経営、プロダクトと多方面でアドバイスをもらえました。それからは弊社でもかなり追加開発を重ねて、受付システムは当初からずいぶんと姿を変え、ついに17年1月、「RECEPTIONIST」として新たに誕生しました。

 「私にはコードは書けない」。これは揺るぎない事実ですが、私には私にしかできない仕事があります。内部も外部もいろんな人を巻き込み、新たな可能性を考え、そのタネを引き寄せてくる-。それが私の仕事だと思っています。

 今回は「RECEPTIONIST」の誕生についてお話しました。次回は、このプロダクトがどのように成長していくのかをお話できたらと思います。

【プロフィル】橋本真里子(はしもと・まりこ)

ディライテッド株式会社 代表取締役CEO
1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週金曜日。