【ビジネスアイコラム】
きしみ続ける日中のマスコミ報道で、この秋おそらく唯一の前向きな話題は、ノーベル賞の受賞報道だった。日本のメディアは中国の現代作家、莫言氏の文学賞受賞を好意的に伝え、中国メディアも医学・生理学賞に輝いた山中伸弥・京都大学教授の業績を評価した。
ノーベル賞に対し、中国は屈折したまなざしを向けてきた。
インドに逃れたチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世をのぞいて、新中国出身のノーベル賞受賞者は莫氏で3人目。莫氏と同じ文学賞を受賞した高行健氏(フランスに帰化)は、古巣の中国作家協会から「文学ではなく政治的基準で選ばれた」と、公式談話で中傷された。
民主活動家の劉暁波氏に至っては、あと8年間も投獄生活が続く悲惨さだ。その意味で、莫氏は中国がおおっぴらに慶賀することのできた最初のノーベル賞受賞者なのだ。中国共産党の李長春・政治局常務委員は、莫氏の受賞にあたり、「中国文学の繁栄と進歩にとどまらず、中国の総合的な国力と国際的影響力の高まりを体現している」と絶賛した。