知覧特攻平和会館(鹿児島県南九州市)や鹿屋航空基地史料館(同県鹿屋市)など、九州にある特攻隊ゆかりの地の訪問者が増加している。特攻隊員と零式艦上戦闘機(零戦)を取り上げた百田尚樹氏原作の映画「永遠の0(ゼロ)」が700万人の観客動員を記録し、国のため家族のために命をなげうった特攻隊員への関心が改めて高まっているからだ。南九州市は隊員の遺書の世界記憶遺産登録を目指す。終戦から69年。散華した特攻隊員の思いは現代に伝わっている。(奥原慎平、写真も)
大型連休中の5月4日。知覧特攻平和会館は多くの人で混み合っていた。
だが、にぎやかな感じはない。どの来館者も隊員の遺書や日誌に静かに目を通し、ゴーグルや制服などの遺品をじっと見つめる。うっすらと涙を浮かべる人も多い。
佐賀県立唐津南高校野球部の糸山孝監督は、部員30人を連れて来館した。「同年代の若者がどのように生きたのかを、生徒に知ってほしかった」と語った。
知覧特攻平和会館の今年1~4月の来館者数は、18万4千人と、昨年同期(16万8千人)を1割近く上回っている。
知覧には戦時中、陸軍最大の特攻基地が設けられ、出撃した439人の隊員が戦死した。
会館は、知覧に限らず、陸軍の特攻隊員の写真や遺書など約4500点の遺品と1036人分の遺影を展示している。
菊永克幸館長は「『永遠の0』ブームも来館者を引きつけているのでしょう。遺書や人生最後の手紙を読み、特攻隊員に思いを馳せてほしい」と述べた。