プロ野球の選手契約、譲渡期間が7月31日に終了した。新外国選手はセ、パの両リーグ合わせて13人が開幕後に補強されたが、特筆は4人がキューバ出身であること。巨人がセペダ外野手(34)に続き、メンドーサ投手(20)と契約、DeNAは強打のグリエル内野手(30)を、ロッテもデスパイネ外野手(28)をとった。
◆政府公認の“移籍”
キューバは1959年の革命以降、国外でのプロ契約は禁止していた。過去、中日のリナレス(2002~04年)の例があるが、あくまでも特例…。今回はすべてキューバ政府公認の“移籍”なのである。
近年、悩めるキューバの姿があった。野球が盛んで過去5度の五輪で優勝3度、準優勝2度と“世界最強”を誇るが、国内リーグは存在するものの、社会主義国家のためプロ・リーグはない。プロ最高峰である米国と国交がないキューバは、ビッグマネーを夢見る逸材たちの相次ぐ流出に悩まされていた。
たとえば…。105マイル(約169.1キロ)の“最速男”で知られるチャップマン投手(28)=レッズ、今年の米球宴の本塁打競争で2年連続優勝した若き主砲・セスペデス外野手(29)=レッドソックス、今季新人王の有力候補であるアブレイユ内野手(27)=ホワイトソックス=ら今季メジャーで活躍する選手は19人を数え、すべて亡命である。捕まれば、もちろん大罪。決死の覚悟でその地位を得ていた。
にわかに世界最強の地位も揺るぎ始めた。そこで歯止めをかけるため、政府は自国のスポーツ選手に国外でのプロ契約を認める方針を決定、今年4月に解禁したのだった。プロ契約は政府の保護下で行われ、海外球団に選手を“リース”する形で年俸のうち数十%を国に収めるシステムを取った。国交がない米国へのリースはありえない。野球大国であり、資金的にも余裕のある日本への移籍が魅力市場となったのである。