特許権を「企業のもの」と位置づけることで、発明をめぐる煩雑な事務手続きや、複雑な権利関係の処理が、「特許は発明した社員のもの」とする仕組みよりも簡単に進められる。
産業界から期待が高かった今回の制度改正には、革新的な発明をした従業員からの巨額訴訟リスクを避けたいという思惑と並び、新制度が技術開発のスピードアップにつながるとの期待も背景もある。
政府は「知財立国」を掲げて、特許権の取得期間の短縮化などの取り組みを進めている。今回の制度改正も、そうした知財立国への一助となる。
ただ、報奨内容を決める裁量は最終的には企業に委ねられている。優れた人材に十分な報奨で報いることができなければ、人材の海外流出を招きかねない。競争力強化と人材のつなぎとめを両立させるうえで、労使で取り決める報奨規定の前提として、政府が策定する指針もカギを握る。