■安定供給に重要な原子力 環境負荷・安全保障…
□クレディスイス証券 チーフマーケットストラテジスト・市川眞一氏
□東京大学教養学部客員准教授・松本真由美氏
2030(平成42)年時点の最適な電源構成(エネルギーのベストミックス)を決める議論が本格化している。東日本大震災前まで約3割を占めていた原子力発電の比率をどこまで引き下げるかが焦点だ。火力や原子力、再生可能エネルギーをどう組み合わせて発電するかは、暮らしや産業を左右するだけでなく、エネルギー安全保障にも直結する問題だけに、総合的な観点からの検討が欠かせない。そこで市川眞一・クレディスイス証券チーフマーケットストラテジスト、松本真由美・東京大学教養学部客員准教授に、電源構成のあり方について話し合ってもらった。(司会・井伊重之産経新聞論説委員)
◆化石燃料9割は異常
--日本では一昨年9月から国内すべての原発が稼働を停止し、電源全体に占める火力の割合が約9割という状態が続いています。まず、この現状をどう見ますか。
市川 原発の停止によって日本の燃料購入費が増加し、さらに、円安基調が続いていることもあってコストプッシュ・インフレになってしまう恐れがあります。それと大規模備蓄の困難なLNG(液化天然ガス)を常に必要量確保するため各社は大変苦労しており、実際は薄氷を踏む思いなのです。経済合理性や国家安全保障の観点、さらには環境問題からしても化石燃料が9割というのは、どう考えても異常です。