全国の電力会社36社が温室効果ガス削減に向けて、計画の提出と実績の報告を求める自主的な管理団体を設立する。計画達成に努力しない電力会社には、社名や実態を公表するなどの厳しい処分を科す。新たな枠組みを提示し、停滞している石炭火力発電所の新設計画を前進させる。
環境省は石炭火力発電所の新設に反対しているが、新設容認に転じる方向だ。電力業界を管轄する経済産業省が温室ガス削減が進むよう指導を強めることを条件にする。
新団体の名称は「電気事業低炭素社会協議会」とし、大手電力10社や新規参入の電力会社(新電力)24社が加わり、8日に設立する。火力や水力、原発など電源構成が異なる各社が参加し、温室ガス削減に向けて統一的な行動を取れるようにする。
排出削減計画の策定と誠実な遂行を「義務」と位置付け、違反した電力会社にはまず是正を求める。応じないと社名などを公表し、それでも改めない場合は総会を開いて除名する。
電力業界は日本の温室ガスの最大の排出源となっている。また石炭火力発電は燃料費が安いが、温室ガスの排出量が多い。電力業界は政府の温室ガス削減目標の達成に向け、2030年度に13年度比で35%の温室ガス削減の自主目標をつくった。
新団体は電力各社に排出削減に向けて、毎年、削減計画の達成実績の報告も要求し、確認する。削減実績が振るわない電力会社があれば、対策を強化するよう求める。社ごとの削減目標値は設定しないが、電力業界全体では確実に達成できるようにする。
環境省はこれまで、電力業界の自主目標に実現に向けた枠組みが不十分だとし、政府の削減目標達成に支障が出ると懸念していた。山口県宇部市と愛知県武豊町、千葉県袖ケ浦市、同県市原市、秋田市の計5カ所の大型石炭火力の建設に「是認できない」とする環境影響評価(アセスメント)の意見を出していた。