米グーグル傘下の企業が開発した囲碁ソフト「アルファ碁」が世界トップ級プロ棋士との対戦で勝ち越しを決め、世界に衝撃が広がっている。第4戦は、韓国人棋士が一矢報いたものの、ソフトに対する評価が揺らぐことはなさそうだ。
「勝利は10年先」と考えられていた囲碁ソフトが予想を上回る進化を遂げた秘密は、コンピューターが自ら学習する「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる人工知能(AI)の技術。自動車や医療など多様な分野で応用が期待されている。
◆大局観
「アルファ碁は人間と近い。全体がよく見えている」。連日、インターネットで対戦を見届けた日本囲碁界の第一人者、井山裕太碁聖はソフトの進化に驚きを隠さなかった。
囲碁は縦19×横19、計361の交点に石を配置して陣地を争うゲーム。チェス対局の展開パターンが10の123乗なのに対して、囲碁は10の360乗通り以上とされ、展開を読み切るには限界がある。
このためプロ棋士は「大局観」という、自らの直感、経験に基づいて局面を読んでいく。この人間特有の判断力が、囲碁ソフトの大きな課題だったが、アルファ碁は深層学習により、この大局観を手にした。