美術品市場、低価格帯に高まる期待

2016.3.15 05:00

競売大手クリスティーズのオークション会場。大規模なオークションの伸び悩みが目立つ中、参加者が急増する低価格市場への期待が高まっている=ロンドン(ブルームバーグ)

競売大手クリスティーズのオークション会場。大規模なオークションの伸び悩みが目立つ中、参加者が急増する低価格市場への期待が高まっている=ロンドン(ブルームバーグ)【拡大】

 最近のオークションなどのニュースを見ると、美術品市場の見通しは厳しそうに思われる。出品される作品の評価額は急落、出品数も総売上高も大幅にダウン、さらに、多くの報道機関が市場の衰退は間近だと不吉な警鐘を鳴らしている。

 ◆競売大手は不調

 だが、こうした予測は全て、美術品市場のごく一部の現象から引き出されたものにすぎない。例えば、ブルームバーグが報道するのは、競売大手クリスティーズ、サザビーズ、フィリップスの3社のニュースばかりだ。世界中にある何万もの小規模な競売会社や、多数の美術品バイヤーの動向が報じられることはない。1点の絵画に100万ドル(約1億1390万円)を投じることができる人は世界でもごくわずかだが、自宅に絵画を飾っている人は何百万人もいる。大富豪でも、ギャラリーや相対売買で人目につかず美術品を購入することもある。つまり、市場が低調なのか好調なのかは、実は全く分からないのだ。

 だが、美術品市場の関係者の間でさえあまり知られていないあるオンライン・オークション・サービス「インバリュアブル」のおかげで、こうした状況は変わりつつある。1989年にデータベース会社アーティクラフトとして創業し、2009年に現在の形に再編成されたインバリュアブルは、実質的にはポータルサイトだ。

 例えば、収集家が同社のサイトでアンディ・ウォーホルのプリントを検索すると、実店舗とオンライン合わせて4000社以上のオークション会社が近日中に販売する作品が表示される。作品の大半は同市場の中~低価格帯(10万ドル以下)に収まるものだ。利用者はインバリュアブルのサイトを通じて入札することができ、売買が成立すれば、同社はオークション会社から約5%の手数料を受け取る。

 参加するオークション会社の数が非常に多いため、インバリュアブルは美術品売買に関して、恐らく世界最大級の膨大なデータベースを構築している。アートネットなどの同業他社も現代美術についてはしっかりとしたデータベースを持っているが、包括的に見れば劣る。個人収集家や企業、公共団体も料金を払えばインバリュアブルのデータベースにアクセスすることができ、同社によれば、世界最大手のディーラーやギャラリーに加え、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やパリのルーブル美術館、さらには米国税庁までもが顧客リストに名を連ねているという。「もちろん競売会社も顧客だ。当社は彼らがより良い鑑定人になれるよう、サービスを提供している」とインバリュアブルのロブ・ワイズバーグ最高経営責任者(CEO)は述べている。

 とはいえ、これまでのところ、同社はいかなる集計データも公表しておらず、情報を市場分析や実態究明に役立てるには至っていない。度重なる催促を経て、同社はようやく情報開示に同意したが、それも極めて限定的だ。

 インバリュアブルによれば、14年に同社サイトを利用した美術品オークション会社は約1400社で、その総売上高は6億790万ドルだった。総売上高は昨年12%伸び、6億8180万ドルに達している。さらに掘り下げてみると、アジア美術・古美術は14年が2億3730万ドル、15年が17%増の2億7660万ドルと、同分野の伸び率が特に大きいことが分かる。

 繰り返しになるが、これは情報のごく一部だ。インバリュアブルは総売上高を構成する作品数を公表していないため、12%の増加はたった1点の数百万ドルの売買に起因する可能性もある。また、同社は過去の売り上げデータの公表を拒んでいるため、14、15年にかけての伸びは例外的なものかもしれない。

 ◆トリクルダウン効果

 それでもやはり、データは有用だ。クリスティーズやサザビーズの数十億ドルに上る売上高と比べれば見劣りするが、従来は見落とされていた中小オークション会社の情報が明らかにされたのは、ほぼ初めてと言っていい。

 「アート・マーケット・モニター」の編集者であるマリオン・マネカー氏は、インバリュアブルの公表した総売上高の数字は、おおよその推定を行うには十分役に立つと話す。「低価格市場の方が盛況であることがわかる。市場への参加者が増えている一方、1人当たりが費やす金額は減っている」と同氏は分析する。

 言い換えれば、インバリュアブルのデータは、徐々に富が広がるトリクルダウンの効果が出てきていることを示しているようにも見える。ニュースになるような大作の売買には、美術品には投資価値があると確信している買い手がいるのだろう。

 マネカー氏は主に1000万ドル以上の作品に言及し、「10年から15年にかけてはいわゆる名作の時代だった。現在では勢いが衰えたが、この間に自信たっぷりの参加者を数多く抱えたミドルマーケットの形成が促された」と指摘した。

 多くのディーラーやオークション会社にとっては心強いニュースだろう。100万ドルを費やす数千人の買い手が1000ドルを費やす数百万人の買い手に取って代わられるとすれば、市場の成長の可能性は大きい。そして目下、そうした変化は確かに起こりつつあるように見える。(ブルームバーグ James Tarmy)

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