【視点】エイズ活動家はなぜ中国を去ったのか いまも続く「愛知行動」の受難 (1/4ページ)

 □産経新聞編集委員・宮田一雄

 中国のエイズ・人権活動家として知られる万延海氏は2010年に北京を離れ、米国で暮らしている。万氏が創設した「北京愛知行研究所」に対し、08年の北京五輪以降、当局の干渉が激しくなり、中国での活動が困難になったからだ。

 現在は米エール大学客員研究員の万氏がこの夏、来日した。短い滞在期間ではあったが、8月5日には東京・新宿二丁目のコミュニティセンターaktaを訪れ、スタッフと意見交換を行っている。

 ゲイコミュニティのHIV/エイズ啓発活動の拠点であり、内外の著名な研究者や指導者が数多く訪れることからエイズ対策の「迎賓館」とも呼ばれる施設である。

 その2日後の日曜日には東京都内で『中国市民活動の20年間と今後』という万氏の講演会も開かれた。

 2つの機会を取材した印象では、万氏は必ずしも中国政府との対立を望んでいるわけではなかった。北京に戻り、予防活動やHIV陽性者、性的少数者の支援活動を続けられるのなら、政府とも協力したい。反体制活動家というよりもむしろ、そうした現実重視のバランス感覚を有する公衆衛生の実践家というべきだろう。

万氏は当時、中国健康教育研究所に勤務する政府職員で…