◆世界人口は増加の一途
世界人口は増加の一途をたどっており、2015年の人口は70億人を超え、2050年には91億人以上になると予測されている(※1)。人口増加の多くはアジア、アフリカ地域であり、移民の多い米国を除く先進国では現状維持か、減少することが予測されている。
主要国の将来人口の推計を表に示した(※2)。増加する人口のほとんどが貧困層に属し、これらの人々の食糧需給がかなり逼迫した状態になることが危惧されている。2010年時点でも食糧不足にさらされている人口は、アフリカ、アジア地域を中心に全世界で約12億人に達している。
アフリカやアジアでは農地を作るため、森林やマングローブが広域にわたり伐採されている。伐採跡地は農耕地やエビ養殖池として活用しているが、それらの生産に関する技術や知識が欠如しているため、その地域の気候に適応した品種を作付けせず、加えて収穫量を増やすために過剰な肥料、農薬、ホルモン剤を散布している。これにより環境の活力は短期間で失われ、ますます収穫量は減少していく。
さらに、森林伐採地では樹木や土壌から水分の蒸発がなくなり長期の干魃(かんばつ)が起きている。土地は荒廃し、ジワジワと砂漠化が進んでいる(※3)。砂漠化の流れを図1に示した。森林伐採により農地を作り穀物を栽培しても、穀物1キログラムを生産するには1000リットルの水が必要になる。そのため、農地の近くには河川や大規模な湖沼などの存在が必須である。典型的な例として、中国では黄河上流で自然破壊により大規模な耕作地を作り、河川から大量の農業用水をくみ上げていた。そのため、黄河の河口付近ではしばしば河川水の断水が起きている。結局、農業用水が不足し、かなりの耕作地を放棄せざるを得なくなった(※4)。