台湾の「愛日家」蔡焜燦氏死去

　司馬遼太郎の「街道をゆく　台湾紀行」に「老台北」として登場し「愛日家」で知られた蔡焜燦（さい・こんさん）氏が１７日、台北市内の自宅で死去した。９０歳だった。遺言により近親者で密葬を行う。

　蔡氏は日本統治時代の１９２７（昭和２）年、台湾中部・台中市で生まれた。地元の商業学校を卒業後、志願して少年航空兵となり岐阜陸軍航空整備学校奈良教育隊に入隊、日本で終戦を迎えた。台湾に戻った後は体育教師などを経て電子機器会社社長を務めた。

　李登輝元総統と親交が深く、「日本語世代」の代表的存在として日台交流に尽力。親日家を超えた「愛日家」を名乗った。２０００年に日本で著書「台湾人と日本精神」を出版。日本の台湾統治を肯定的に評価し、「日本人よ胸を張りなさい」と訴えた。

　０８年から短歌同好会「台湾歌壇」の代表を務め、台湾での日本の理解促進に貢献したとして１４年春に旭日双光章を受章した。台湾歌壇は今年で創立５０年を迎え、今年度の外務大臣表彰を受けた。（台北　田中靖人）