■3,328遺伝子ノックアウトマウスから疾患モデル発見
□理化学研究所 バイオリソースセンター センター長・小幡裕一
ヒトの遺伝子の機能や疾患における役割は、未解明な部分が多いのが現状である。この課題に取り組むため、理研バイオリソースセンター(マウス表現型解析開発チーム、マウス表現型知識化研究開発ユニット、実験動物開発室および遺伝子材料開発室)を含む18機関が参加する国際マウス表現型解析コンソーシアム(IMPC)ではノックアウトマウスを作製し、その生物学的特徴(表現型)を、国際標準解析プロトコールに沿って解析し、遺伝子機能のカタログ作成を進めている。2016年には、400を超える胎生致死遺伝子を特定し、それらとヒト疾患遺伝子との関連性を明らかにした。(Nature 537:508,2016)
今回、共同研究グループは、3,328遺伝子のノックアウトマウス系統の表現型とヒト疾患の臨床的特徴との間の類似性を分析し、360遺伝子のノックアウトマウス系統が既知の遺伝性希少疾患のモデルマウスとなること、135系統が新たなメンデル遺伝病モデル候補となること、さらにこれまで不明であった1,092の遺伝子の機能を解明した。
IMPCで作製・解析されたノックアウトマウスは、理研バイオリソースセンターをはじめとする世界各国の中核バイオリソースセンターから国際標準疾患研究用リソースとして世界中に提供されている。また、IMPCで得られたデータは、IMPCポータルサイト(http://www.mousephenotype.org/)で公開される。
今回得られた知見も、遺伝性希少疾患の発症に関わる原因遺伝子の特定ならびに疾患モデルを用いた治療法の開発に役立つものと期待される。