南海トラフ地震の津波被害が想定される静岡から鹿児島の沿岸域を対象に、地震発生から30分以内に浸水被害を予測するシステムの開発に東北大(仙台市)などが取り組んでいる。東日本大震災の教訓から、被害を早期に予測し迅速な対応につなげたい考えで、11月ごろの運用開始を目指す。
東北大と大阪大が所有するスーパーコンピューターを利用。気象庁の震源情報や、国土地理院が衛星利用測位システム(GPS)を使って観測する地殻変動のデータを自動的に受け取り、浸水が始まる時間や範囲、深さを計算する。
大震災で被災した沿岸部の調査を基に、浸水の深さと建物の流失棟数の関係を分析。建物の被害分布や、浸水範囲内の昼間と夜間の人口を推定する。予測結果は30メートル四方ごとに地図上に示され、政府内で活用される。
6年半前に発生した大震災では被害の全容把握に時間がかかり、救援や復旧活動に手間取った。その反省を踏まえ、東北大は平成26年、NEC、国際航業(いずれも東京)などとともにシステム作りをスタート。高知市などで行った実証事業で有効性が認められ、災害時に関係省庁が情報を共有する「総合防災情報システム」への導入が決まった。