受付嬢と社長の“二足のわらじ” 資金調達に奔走 命運を分けたエンジェル投資家との出会い (3/3ページ)

社長になって“一番の収穫”

 資金調達と並行して、仲間集めも進めなければなりませんでした。冒頭でもお話ししましたが、弊社にはプロダクト開発に携わってくれる仲間が必要でした。ですが、エンジニアの知識は全くありません。そんな折に、先輩起業家がこんなアドバイスをくれました。

 「まずはエンジニアをいきなり採用するのではなく、プロダクトマネージャー的な人を探したほうがいいよ」

 プロダクトマネージャーという職種は、プロダクトの企画から開発、リリース、マーケティングまで広く管轄する役割を担います。そのアドバイスの真意は、「私とエンジニアの間に“通訳”になる人がいなきゃダメだよ」ということでした。「確かに!」と納得した私は、すぐにプロダクトマネージャーなる人を探し出します。それが今の“相棒”、弊社COO(最高執行責任者)の真弓貴博です。

真弓貴博さん(左)と橋本真里子さん

真弓貴博さん(左)と橋本真里子さん

 彼とは、私がミクシィで受付をしていたときに出会いました。当時、真弓はミクシィでプロダクトマネージャーをやっていたんです。国内でこの職種を置いている企業はそう多くなく、務まる人材もあちこちにいるわけではありません。私もどう探せばいいのか分からなかったので、またもやFacebookの友達リストを見返すことにしました。そこで目に入ってきたのが真弓の名前でした。

 「確か、真弓さんはプロダクトマネージャーだったような…」

 お互いミクシィを退職してからは数回連絡を取ったくらいの間柄でしたが、すぐに連絡を取りました。

 「スタートアップやろうよー!」

 彼への久しぶりの連絡があまりにもカジュアルだったので、今では社内の笑いのネタになっています(笑)。

 彼はすでに別の会社でキャリアを積んでいました。ダメ元で声を掛けましたが、案の定、「できる範囲で手伝うけど、フルコミットは難しい」と言われました。ですが、その後は週に一度、ミーティングに付き合ってくれました。ミーティングを重ねるごとに「あれ? もしかして本格的にやってくれるかも!?」という感覚を覚えるようになったんです。

 そして5度目のミーティングで、ついに彼の口から「一緒にやるよ!」という言葉をもらいました。

 今でも思いますが、彼が仲間になってくれたことが、私が社長になって一番大きな収穫を得た仕事だったかもしれません。彼がいなければ、今のサービスも会社もないと思うんです。

 社長にとって一番重要な仕事の一つは採用(仲間集め)だと思います。スタートアップという少数精鋭で生き残っていかなくてはいけない世界で「相棒」は非常に重要です。こうして集まってくれた仲間たちを幸せにするため、日々どんな仕事も乗り越えられます。現在弊社はインターンも含め、13名が一緒の舟で航海中です。次回はいよいよ本格始動です。

【プロフィル】橋本真里子(はしもと・まりこ)

橋本真里子(はしもと・まりこ)ディライテッド株式会社 代表取締役CEO
1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週金曜日。