箱根駅伝「優勝」に本気で挑む慶応大 暗躍するOB組織「三田会」の策略 (2/2ページ)

 慶應の競走部出身でもある蟹江教授はOB会で起きている動きを大学関係者に相談した。その結果、大学は駅伝競技をはじめとする陸上競技を専門に研究する「ランニングデザイン・ラボ」の設置を承認した。ラボは駅伝チームと連携し、スポーツ医学や栄養学、ITを活用して本格的に選手をバックアップする。

 「血縁主義」を捨てプロコーチに託す

 卒業生同士のつながりが異常に強い慶應だが、コーチにはあえて身内ではなく、外部から人材を招いた。

 「遊びの集団を、箱根を目指す本気のチームに変える」。そう語るのは今年4月に駅伝チームのコーチに就任した保科光作コーチだ。保科コーチは日本体育大出身で4年連続で箱根に出場し、社会人チームの日清食品や母校での指導経験もある。駅伝のプロフェッショナルとして、大学関係者から大きな期待がかかる。

 「就任当初は練習に参加しない生徒もいた。『君たちが目指しているのは箱根のはずだ。本気じゃないなら辞めてしまえ』といった厳しい声もかけ、選手の意識を変えさせた。今は明らかに足りていなかった基礎のトレーニングから練習の強化をしている」

 熱い思いは選手にも伝わっている。駅伝チームのリーダーで環境情報学部4年の下川唯布輝さんは「目標が明確になった」と目を輝かせた。「コーチがくるまでは箱根を目指したいとは、恥ずかしくて言い出しづらかった」と振り返る。保科コーチは30代前半と若いことから、選手からは頼れる兄貴分としても慕われているようだ。

 保科コーチは直近の目標として、2018年の箱根駅伝の関東学生連合チームに慶應から一人出場させることを挙げる。同チームは箱根駅伝の予選会で敗退した大学の優秀な選手で構成される。

 保科コーチは「絶対に箱根で優勝します」と力を込める。“三田会”が操る箱根制覇の方程式で、東京・大手町のゴールテープは切れるのか。

 (プレジデント編集部 鈴木 聖也 撮影=横溝浩孝)(PRESIDENT Online)