【寄稿】パリ協定とカーボンプライシング 日本は制度導入に向けて本格的議論を (3/5ページ)

 ◆カーボンプライシングをめぐる日本での議論

 日本では、カーボンプライシングの導入機運が停滞していましたが、パリ協定に提出する50年に向けた長期的な削減戦略の議論の過程で、カーボンプライシングに再び注目が集まってきました。

 国内では12年に温暖化対策税が導入され、CO2排出量1トン当たり289円が、既存の石油石炭税に上乗せされています。この税収は、省エネなどの温暖化対策に充てられ、一定の効果をあげています。しかし、海外と比べると日本の炭素価格は低いと、経済協力開発機構(OECD)の報告書(2016)は指摘しています。

 しかも、石油石炭税と合わせた日本の実効炭素価格(エネルギー税+炭素税)は、炭素の排出量に比例していないので、低炭素化を目指そうとするインセンティブが適切に働く仕組みにはなっていません。そのため、日本が50年までに80%削減を目指すには、カーボンプライシングの強化が求められるところです。

 これに対し、経団連は「排出量取引制度をはじめとする規制的手法は、経済活動を阻害し、『環境と経済の両立』を困難にするばかりか、長期の温暖化対策に必要な研究開発投資の原資も奪うことから、強く反対する」と、カーボンプライシングの強化に反対しています。経団連は、日本の炭素価格は、明示的な炭素価格である炭素税+エネルギー税だけでなく、自主的取り組みにかかる費用や再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に伴うコストなども排出削減コストとみなし、これらを組み入れた“暗示的価格”でみるべきと主張。さらに、エネルギー本体価格を炭素価格に加えると、他国と比べて高額になると主張しています。一方、環境省は、エネルギー本体価格には、炭素排出に伴う社会的費用は含まれないため、炭素価格としての要素はないと説明しています。