【松本真由美の環境・エネルギーDiary】ニューエコツーリズムへの挑戦 (2/4ページ)

温泉バイナリー発電所のモニター画面
温泉バイナリー発電所のモニター画面【拡大】

  • 土湯温泉の2号源泉
  • 水槽内のオ二テナガエビ
  • 土湯温泉の温泉バイナリー発電所=福島市土湯温泉町

 「土湯温泉の16号源泉から湧き出る139度の温泉水を蒸気と熱水に分離したうえで、熱水を使ってペンタンを気化させ、その蒸気で発電します。タービンを通過したペンタンは10度の冷たい湧水で冷やされ、液体に戻ります。一方、温度が下がった温泉水は成分が変わらないため、旅館などの施設に供給することができます」

 温泉バイナリー発電所は、3つの行政の補助・支援制度を活用しています。環境省の11年度「再生可能エネルギー事業のための緊急検討委託業務」を受託し、温泉資源量や自然条件を調査し、最適なバイナリー発電事業の規模を検討しました。建設事業費は約6億3000万円。

 このうち1割は、経済産業省「再生可能エネルギー発電設備等導入促進支援対策事業補助金」の補助を活用しています。残りの9割は金融機関からの借入金ですが、借入金の8割(5億5700万円)について石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の債務保証を受けました。

 米オーマット社が開発した発電設備を採用し、発電所の設計・建設はJFEエンジニアリングが請け負いました。年間発電量は約260万キロワット時。これは、一般家庭約720世帯の年間消費電力量に相当します。

 15年11月に運転を開始し、発電した電力は内部で消費した後の余剰電力350キロワット分を再エネの固定価格買取制度を利用して東北電力に売電しています。買取期間は15年間。「発電効率が良く、当初の計画より2割増しで発電しています。売電収入は約1億円で、10年間で投資回収できる見込みです」