【高論卓説】正露丸やBMWの“あの音”が持つ重要な役割 「音商標」でCM音初登録 (2/2ページ)

BMWのオフィシャル動画(キャプチャ)
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 「音商標」は、識別力がなければ、登録にならない。音楽的要素と言語的要素からなる「音商標」の場合、言語的要素の部分に識別力があればよい。会社名(ひさみつ)や商品名(ブルーレット)などであれば、識別力が認められるのが通常である。ただし、一般的な商品名(電話など)には識別力がない。これに対し、音楽的要素のみからなる「音商標」の場合、音楽的要素に識別力が備わっている必要がある。

 つまり、需要者からして、「あの音ね」といわしめる程のものでなければならない。これは言ってみれば、当然のことである。商標は、特許や意匠と異なり、登録料を納付し続ける限り更新できるから、永久に効力が発生する。侵害となれば、使用を止めさせたり、あるいは、損害を賠償するよう求めたりすることが可能となる。したがって、何の識別力もない音に登録を認めてしまうと大変なことになってしまう。

 さて、このような「音商標」の今後の重要性について少し触れておこう。有名なCM音が他社に侵害された場合、音商標という制度がなければ、侵害を立証することはそれほど簡単ではない。不正競争防止法という制度を使えば、同じような主張はできるが立証のハードルが高い。著作権という手もあるが、有効期間が限られているなどの問題がある。

 昔と違って、紙媒体が減り、映像媒体が増えていることもあり、音も「ただ乗り」される危険性はそれだけ増えることになる。また、音だから、言語を超えたブランド発信手段として、海外展開の際の企業のブランド戦略にも大きな役割を果たすと思われる。今後もますます登録事例が増えていくことであろうが、どのように活用されていくのか注目したい。

【プロフィル】溝田宗司

 みぞた・そうじ 弁護士・弁理士。阪大法科大学院修了。2002年日立製作所入社。知的財産部で知財業務全般に従事。11年に内田・鮫島法律事務所に入所し、数多くの知財訴訟を担当した。17年1月、溝田・関法律事務所を設立。知財関係のコラム・論文を多数執筆している。40歳。大阪府出身。