イシグロ氏、もう一つの故郷が原動力 「いつか帰国するかもと思い生きてきた」 (2/3ページ)

1989年6月、ロンドンの自宅で写真に納まるカズオ・イシグロ氏(共同)
1989年6月、ロンドンの自宅で写真に納まるカズオ・イシグロ氏(共同)【拡大】

 中世のアーサー王伝説を下敷きに、社会の負の記憶とどう向き合うかを問う最新作「忘れられた巨人」。物語の中で登場人物はついさっき起きた出来事すら忘れてしまう集団的な健忘症にかかっている。それをもたらしているのが世界を覆う霧を大量に吐き出す「竜」だ。イシグロさんが苦しんだ末、たぐりよせた幼少時の記憶から生まれた設定だった。

 「思い浮かべたのは、子供の頃に母親が語ってくれた物語です。鬼とか竜とかが出てくる、日本のおとぎ話ですね。超自然的なものと現実とが混ざり合う日本のおとぎ話を思い出しながら、小説に織り込んでいったんです」

 多感な10~20代を過ごしたのはもっぱら英国。日本語もほとんど話せない。ただ作家となってからも川端康成の小説や小津安二郎の映画「東京物語」に親しんでイメージを育んできた。

「東京は大きな街なのに非常に清潔で安全。ロンドンは違います」