日本版GPS衛星、受信機の低価格化が鍵 普及に向け正念場


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  • 準天頂衛星みちびき4号機を搭載し打ち上げられたH2Aロケット36号機=10日午前7時1分、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センター(草下健夫撮影)

 準天頂衛星みちびきは本格運用に必要な4基がそろったことで、地上の位置を高精度に測定する体制が整った。農業や交通、物流で多様な活用が見込まれる半面、導入コストなど普及に向けた課題は多い。

 運用する内閣府は農業への利用に期待を寄せる。みちびきの信号を頼りに無人トラクターを農場で走らせる実験を行い、わずか数センチの誤差で目的の場所を走行させることに成功している。農家の後継者問題の解消につなげたい考えだ。

 正確な位置情報が必要になる車の自動運転にも役立つ。来月にはみちびきを利用した自動運転バスの走行実験を沖縄県で始める。バスは停留所で道の端に寄って停車するため、高い位置精度が求められるという。

 ただ、みちびきに対応する受信機の普及はこれからだ。一部のスマートフォンやカーナビゲーションは対応受信機を搭載しているが、衛星利用測位システム(GPS)の衛星が日本上空を離れた場合の補完機能にとどまっている。

 みちびきの最大の利点である誤差6センチの高い精度に対応する受信機はまだ少ない。しかも現状では弁当箱に近いサイズで、スマホなどの一般的な携帯端末には収納できない。価格もアンテナなどと合わせて数百万円と極めて高額だ。

 内閣府の担当者は「技術革新で小型化し値段も下がってきた。農機や建機への搭載は問題ない」。価格は近く百万円を切り、将来は大幅に安くなるとみているが、スマホへの搭載は当面、技術的に難しい。

 関係者は「当初は個人向けではなく、事業規模が大きく一定のコストを負担できる企業や公共部門の利用で実績を重ねることが重要だ」と指摘する。

 政府はみちびきの経済効果を平成32年に国内外で2兆円超と見込んでいるが、受信機が普及しなければ絵に描いた餅に終わってしまう。高精度のメリットを国民が広く感じられるようになるのか。官民の取り組みはこれからが正念場だ。