【高論卓説】ノーベル物理学賞、湯川秀樹の実父 (1/3ページ)

 ■海底地滑り、津波の原因解明へ道

 地質学者の小川琢治は、ノーベル賞物理学者、湯川秀樹の実父である。彼は1870年、紀伊国田辺藩の儒学者、浅井篤の次男として生まれた。16歳で上京し、第一高等学校に入学。20歳のときに濃尾地震に遭遇した後、熊野旅行に行き、湯ノ峰温泉、瀞(どろ)八丁、潮岬を旅行する。この地震と旅行がきっかけで地質学に興味を持ったといわれている。

 2年後には帝国大学理科大学地質学科に入学している。97年に東京帝国大学を卒業して地質調査所に入所したが、1908年には退官して京都帝国大学文科大学教授地理学講座担当となり、21年には同大学理学部地質鉱物学科の初代主任教授となった。

 そして23年に大正関東地震が起こった。地震の直後から水路部が相模湾の水深の調査を行い、場所により100メートルを超える大規模な水深変化が起こったことが報告された。陸上の地形変化は1、2メートルにとどまっているのに対し、海底ではその100倍近い変化がなぜ起こったのかが議論の的になった。

 小川は24年に雑誌「地球」に「相模湾のいわゆる隆起と陥没の意義如何(いかん)」と題した論文を発表した。その中でこの大きな水深変化を「地震に伴って海底崩落および洗浄の作用が海底地盤の直後の振動と海水の津波を起こす震盪(しんとう)とで大規模に起こったものとすべきだと思ふ」と述べている。また、「数百平方粁(キロメートル)の海底地盤が平均半米(メートル)だけ高まったとしてもすこぶる大きな体積の変化で、同じく海水の動揺を起こす原因として起こってくる」と、相模湾内の津波の原因として海底地滑りを示唆している。

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