ジョコ氏、出馬明言せず インドネシア19年大統領選

高い支持率を誇るジョコ大統領。次期大統領選に出馬する意向は明らかにしていない(ブルームバーグ)
高い支持率を誇るジョコ大統領。次期大統領選に出馬する意向は明らかにしていない(ブルームバーグ)【拡大】

 東南アジア最大の経済国、インドネシアでまもなく、2019年の大統領選に向けた選挙戦の火蓋が切られる。インドネシア初の非エリート層出身のジョコ大統領は、4政党から支持を得つつも、自身の出馬の可能性について沈黙を守っている。

 ◆今も人気健在

 ジョコ氏は26日までにブルームバーグ・テレビのインタビューに応じたが、続投するかどうかについては「今は国民から負託された職務に集中している。大統領選については、国民に委ねる」「全政党は目下、大統領選に焦点を合わせている。自分は職務に専念する」と述べるにとどめた。

 ジョコ氏は前回の大統領選で国民の日常生活の向上や規制緩和、汚職撲滅による事業環境の改善を公約に掲げ、インフラ整備に重点的に取り組んできた。インドネシアは投資適格級の信用格付けを取り戻している。

 大統領就任後はインフラの整備や補修の重要性を強調し、最大のビジョンに掲げた。インタビューでは「次の段階では人的資源を強化したい」と話した。

 ジョコ氏の人気は今も健在だ。インドネシアの調査会社サイフル・ムジャニ(ジャカルタ)が9月に実施した調査で、大統領の支持率は68%だった。最初の数カ月は議会運営に苦慮したものの、その後支持率は3分の2以上に達した。ジョコ氏の所属する闘争民主党(PDI-P)に次ぐ議会2位の勢力を持つゴルカル党は、公に19年の大統領選でジョコ氏支持を打ち出している。

 国営アンタラ通信は8月に、闘争民主党の連立相手、ハヌラ党がインフラ事業の推進と開発に注力した現政権の成果に触れ、ジョコ氏支持を表明したと伝えた。他にも2つの少数政党がジョコ氏を支持している。

 それでもジョコ氏が再選を目指せば、厳しい戦いになるだろう。14年の大統領選でジョコ氏と接戦を繰り広げたスハルト元大統領の娘婿のプラボウォ・スビアント元陸軍戦略予備軍司令官は、雪辱を期して再出馬する可能性があり、世界最大のイスラム教人口を擁するインドネシアで、イスラム票取り込みに熱心だ。

 プラボウォ氏は、次期大統領選の前哨戦として注目を集めた今年4月のジャカルタ州知事選に当選したアニス・バスウェダン前教育・文化相を支持していた。宗教的な緊張が高まる中で行われた同知事選の決選投票は、ジョコ氏の盟友で、同氏が支持したキリスト教徒で中国系の現職、バスキ・プルナマ(アホック)知事が敗北。プルナマ氏はこの後、イスラムの聖典コーランを侮辱する発言をしたとして、宗教冒涜(ぼうとく)罪などに問われ、禁錮刑に処せられた。

 ◆人種と宗教が焦点

 人種と宗教は19年大統領選で大きな役割を担う可能性がある。7月に大衆団体を非合法化する権限を新たに付与されたジョコ氏は、イスラム強硬派の団体「ヒズブアッタハリル・インドネシア」の言動が(インドネシアの統一などを定めた国是の建国5原則)『パンチャシラ』から逸脱しているとして、同組織の解体命令に署名した。

 一部野党からはこうした動きに批判の声が上がっており、ジョコ氏のイスラム教徒としての資質に野党が疑問を呈する隙を与えかねない。ジョコ氏は14年の大統領選の投票日直前に聖地メッカを訪問、自身に対する宗教、人種をめぐる疑惑払拭に努めた。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の調査員、トビアス・バスキ氏(ジャカルタ在勤)は、ジョコ氏はどの選挙戦でも過激化する宗教団体の台頭に対処する必要がある。現在野党が政権を握るジャカルタ州を中心に、ジョコ氏は攻撃を受けやすい」と指摘した。

 それでもジョコ氏はインドネシアのイスラム教徒は寛容で宗教的多元主義をとり、近代的だと主張する。「インドネシアは総人口2億5000万人を擁し、およそ1万7000の島々で構成される群島で、民族集団の数は714種に上る。巨大な国だ」とし、「ジャカルタ州知事選の問題は政治的なものであって宗教問題ではない。インドネシアのイスラム教徒は寛容で多元的、近代的で穏健だ」と語った。

 来年6月には地方選挙が予定されており、次期大統領選の行方を占う試金石になるとみられている。(ブルームバーグ Rosalind Mathieson、Rieka Rahadiana)