【Science View】 (1/4ページ)

村川泰裕氏
村川泰裕氏【拡大】

  • ≪iPS細胞樹立時に生じるゲノム変異≫iPS細胞樹立時のリプログラミングの際に、(1)細胞質内のミトコンドリアから活性酸素が一過的に放出される(2)放出された活性酸素によって核内の核表面に近いLADに点変異が生じる(3)LADにはDNA修復酵素が届きにくいため点変異が高密度で蓄積する-というメカニズムが考えられる。
  • 縄田耕二氏
  • ≪光波長変換に基づく後進テラヘルツ波発振の概略図≫独自に設計した疑似位相整合デバイスに近赤外励起光を導入するだけで、他の光学素子を用いずに後進テラヘルツ波を発振させることができる。このとき、光波長変換により発振したテラヘルツ波と対になって発振する近赤外光(アイドラー光)の伝搬方向は逆向きであることが分かった。

 ■iPS細胞におけるゲノム変異の解明

 □理化学研究所 科学技術ハブ推進本部 予防医療・診断技術開発プログラムマネージャー・村川泰裕

 再生医療や創薬への応用が期待されているiPS細胞(人工多能性幹細胞)を樹立するには、体細胞に4つの転写因子を導入し細胞を初期化させる。近年iPS細胞には、ゲノム塩基配列中で1塩基のみが変異した点突然変異(点変異)があることが報告され、移植後のがん化などへの関与が懸念されている。これらの点変異の特徴などは明らかになっていなかった。

 今回、理研を中心とした共同研究グループは、マウスおよびヒトiPS細胞樹立時に生じた点変異のデータとエピゲノムデータを統合し、点変異のゲノム上の分布パターンを全ゲノムレベルで調べた。その結果、点変異は(1)遺伝子領域およびプロモーターなどの遺伝子発現調節領域では低密度であること(2)細胞内の核膜直下に位置し転写が抑制された核ラミナ結合領域(LAD)で高密度であることから、iPS細胞におけるゲノム変異の多くが、遺伝子発現に影響を与えない“良性の変異”であること-が示された。さらに、LADへの点変異の蓄積については、ミトコンドリアから活性酸素が一過的に放出され、その活性酸素によって核内の核表面に近いLADに点変異が生じ、LADにはDNA修復酵素が届きにくいため点変異が高密度で蓄積する、というメカニズムが考えられた。

 今後、iPS細胞のゲノムデータと臨床データをリンクさせることで、ゲノム変異がもたらす影響について実証されれば、安全で有効な治療が展開されるものと期待できる。