11月にインドネシアのメディアをにぎわしたのは、なんといっても電子住民登録証(e-KTP)の導入をめぐる汚職事件であろう。インドネシア汚職撲滅委員会(KPK)は11月15日、収賄の容疑で、出頭命令に従わないスティヤ・ノファント国会議長(ゴルカル党党首)の指名手配を決定し、家宅捜索を行った。国会議長の逮捕ということもあってテレビでも大きく取り上げられた。
この汚職事件は、KTP(カーテーペー:Karte Tanda Penduduk)と呼ばれる住民登録証カードを、国家予算5兆9000億ルピア(約490億円)をつぎ込んで全面的に電子化する事業に際し、その約3分の1に当たる2兆3000億ルピアが不正に流用されたというものである。
◆不正IDカード
インドネシア国民は、17歳になると病院で発行してもらう出生証明書などを持って役場で手続きをし、住民登録証カードを作成することが義務付けられている。名前、性別、生年月日、出生地、既婚・未婚、職業、住所、宗教、身分証明書の期限、血液型といったさまざまな情報が書かれたIDカードである。
しかし、ずさんな管理体制から、各都市のカードを作り、1人で複数のカードを所持したり、まったく別の名前で住民登録証カードを作ったり、フィルムをはがして期限を変更するなどの偽造を行ったりと、IDカードとして使用されているものの、いくらでも不正ができる状況にあった。また、それら不正IDカードを使ってクレジットカードの取得や銀行口座の開設など犯罪に利用されることもあった。
これらの問題を受けて、住民登録証の電子化が議論され、国民1人に1つの番号が付与されることが決まった。その導入をめぐり、大規模な汚職が発覚したのである。