【Science View】

細谷俊彦氏
細谷俊彦氏【拡大】

  • ≪図マウス大脳皮質のマイクロカラムとその格子配列≫A:色素注入により可視化された第5層のマイクロカラム。マイクロカラムは機能の異なる視覚野、体性感覚野に共通にみられる。1μmは1000分の1mm。B:マイクロカラムを上面から見たときのハニカム状の六方格子構造。縦軸が前後方向。緑・紫・茶の色付きの線は、最適推定された六方格子を示す。C:細胞タイプ特異的なマイクロカラムの模式図。異なる色は異なるタイプの神経細胞を示す。
  • 野田修平
  • ≪図新規マレイン酸合成経路≫大腸菌代謝経路内に構築した新規マレイン酸合成経路を示している。通常、コリスミ酸は芳香族アミノ酸(L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-トリプトファン)を生合成する上での中間化合物として、大腸菌代謝経路内に存在する。芳香族アミノ酸を合成するための遺伝子は大腸菌が内在的に保有しており、新規マレイン酸経路中の遺伝子は全て外来微生物由来の遺伝子である。

 ■脳の基本単位回路を発見

 □理化学研究所 脳科学総合研究センター 局所神経回路研究チーム チームリーダー・細谷俊彦

 大脳はさまざまな皮質領野に分かれており、それぞれ感覚処理、運動制御、言語、思考など異なる機能を司っている。大脳は極めて複雑な組織のため、その回路の構造には不明な点が多く残っている。特に、単一の回路が繰り返した構造が存在するか否かは不明だった。

 今回、理研の研究チームは、大脳皮質に6層ある細胞層の一つである第5層をマウス脳を用いて解析し、大部分の神経細胞が細胞タイプ特異的な細長いクラスター(マイクロカラム)を形成していることを発見した。マイクロカラムは六方格子状の規則的な配置をとっており、機能の異なるさまざまな大脳皮質領野に共通に存在していた。また、同じマイクロカラムに含まれる細胞は同期した神経活動を示し、方位選択性や眼優位性などの刺激応答性が類似していた。さらに、神経回路が形成される時期には、マイクロカラムの細胞はギャップ結合で結合されており、のちに共通な神経入力を受けることが示された。以上のことから、第5層の神経細胞はマイクロカラムが繰り返した回路に組織化されており、個々のマイクロカラムは機能単位として動作することが分かった。この結果は、同じ構造を持つ多数のマイクロカラムの並列処理が第5層の機能を担っていることを示している。

 今後、単一のマイクロカラムの機能を明らかにすることにより、脳機能の理解が大きく進むものと期待できる。

                  ◇

【プロフィル】細谷俊彦

 ほそや・としひこ 1995年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程中途退学、博士(理学)。東京大学遺伝子実験施設助手、国立遺伝学研究所助手、ハーバード大学博士研究員、理化学研究所脳科学総合研究センターユニットリーダーを経て、2010年4月から現職。

 ■コメント=複雑な大脳皮質を単純な単位回路に分解することにより脳機能の深い理解を目指したい。

                ■ □ ■

 ■大腸菌を用いたマレイン酸合成法の開発

 □理化学研究所 環境資源科学研究センター バイオマス工学研究部門 細胞生産研究チーム 基礎科学特別研究員・野田修平

 マレイン酸(C2H2(COOH)2)はカルボキシ基を2つ持つ二価カルボン酸のシス体で、穏やかな加熱により容易に脱水され無水マレイン酸を生じる。無水マレイン酸は高分子材料の原料として産業的に重要な化合物で、その世界市場規模は年間180万トンを超える。化学的には、石油由来のベンゼンやブタンなどを五酸化バナジウム触媒存在下で気相酸化して合成する。しかしこれまで、マレイン酸を微生物で合成した例はまだなかった。

 今回、理研の研究チームは、放線菌の芳香環合成経路と芳香族化合物分解菌の保有する経路を組み合わせ、大腸菌細胞内に「新規マレイン酸合成経路」を構築し、「バイオマス資源」の構成成分である単糖の一種グルコース(ブドウ糖)からコリスミ酸を経て、直接マレイン酸を合成することに成功した。さらに、中間生成物のピルビン酸を細胞増殖へとリサイクルすることにより、細胞内の代謝経路を最適化した。その結果、マレイン酸の生産量を、単純に合成経路を導入した株と比較して250倍以上に引き上げることにも成功し、最終的に生産収率は約37%となった。

 バイオマス資源の利用は、大気中の二酸化炭素量を増加させない。今後、現在化学合成法のみでしか生産されていないマレイン酸生産プロセスの一部をバイオ生産で代替することにより、「低炭素社会」構築へ貢献すると期待できる。

                  ◇

【プロフィル】野田修平

 のだ・しゅうへい 2013年神戸大学大学院工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。理化学研究所環境資源科学研究センター特別研究員を経て、15年4月から現職。専門は代謝工学、酵素工学、培養工学。

 ■コメント=微生物によるモノ作りを通して、環境負荷の少ない社会の構築に貢献したい。

                ■ □ ■

 ■企業向け理研イブニングセミナー開催

 理研は、研究成果と研究活動を産業界に伝えることを狙いに、企業関係者を対象としたイブニングセミナーを開催している。セミナーは先着40人の事前登録制で、毎月第1水曜日は神戸、第2・4水曜日は東京で、それぞれ17:30から開催される。来年1~2月の概要は以下の通り。

 ◇1月24日(水)「機能性ポリオレフィン-ヘテロ原子と触媒との相互作用で極性基の導入が容易に-」講師:西浦正芳(侯有機金属化学研究室)

 イオンコンパス東京八重洲会議室(東京)

 ◇2月7日(水)「iPS細胞からのインスリン分泌細胞作製と移植-インスリン依存性糖尿病の根治治療-」講師:岩田博夫(健康制御チーム)

 健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス三宮拠点(神戸)

 ◇2月28日(水)「酵素を用いた機能性ポリペプチド合成法の開発-環境低負荷型のバイオ材料合成-」講師:土屋康佑(酵素研究チーム)

 理研東京連絡事務所(東京)

 ◇申し込み 各回1週間前までに、会社名、氏名、メールアドレス、電話番号、希望する回(複数可)を記載の上、件名を『理研イブニングセミナー参加申込』としてevening-seminar@riken.jpに登録

 ◇問い合わせ 理化学研究所産業連携本部連携推進部技術移転企画課

 (電)048・462・5475 E-mail:evening-seminar@riken.jp