安室奈美恵の引退に思うこと 我々中年が「平成の歌姫」になかなか共感できない理由 (2/4ページ)

安室奈美恵の紅白出演を報じるスポーツ紙
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◆安室奈美恵には全く感動しなかった

 「太陽のSEASON」に終止符を打つことにした安室奈美恵の存在感が期待ほど大きくなかったことこそ、今年の紅白の安定感、もっと大胆に言うならば、日本の音楽シーンの充実度、層の厚さを物語っていたのではないか。さらに言うならば、直前に発表された安室奈美恵が視聴率の起爆剤にならなかったことこそが、「安室奈美恵とは何か?」を物語っている。

 皆が礼賛モードなので、逆張りでPV狙いのためにけなすわけではないが、彼女の出演は面白いくらいに感動しなかった。もっと泣きたかったというのが率直なところだ。メディアも「安室奈美恵の紅白出演に国民は涙」などと書きたかったのだろう。しかし、奇しくも彼女の代表曲であり19歳にして第38回日本レコード大賞を受賞した「Don’t wanna cry」状態だった。いや、単純に泣けないのである。もうその場から「Body Feels EXIT」だったのだ。

 ちゃんと見ないとけなせないので、リアルタイムで見ていたし、録画も見たのだが、まず、目が痛くなるほどのライトの当て方で、暑そうだった。いや、見ていて目が辛くなった。白いイメージを印象づけるためなのか、肌をキレイに見せるためなのか……。地元沖縄や海外から生中継ならまだ分かるのだが、同じ敷地内での別スタジオでの出演というこの特別待遇感が逆に痛かった。涙を見せたものの、淡々としたパフォーマンスに見えた。何より、NHKにいるのなら会場で挨拶しろよと思った次第だ。

 事前に流された煽り映像はなかなか興味深かった。安室奈美恵といえば不老長寿というか、ずっとルックスが変わらないと評判だったが、初期の映像が流され、さすがにそれなりに年齢を重ねていることを確認できた。早すぎる引退とは言うものの、デビューして25年だ。長きにわたって活動してきたのである。引退させてあげても良いのではないかという心境になってしまった。

 何より、選曲がダメだった。彼女がこの夜に歌った「Hero」はリオデジャネイロ五輪のテーマ曲なのだが、私は閉会式をYouTubeで見ただけなので、全く知らなかった。たしかに、NHKとも関係があるし、最近のヒット曲ではあるが、お茶の間が期待していたのは昔の曲なのではないか。「TRY ME ~私を信じて~」とばかりに口説いたNHKだったが、そもそも特別枠での出演、そして選曲自体どうだったのか。

我々中年が安室奈美恵に共感できない理由