いつまで「ガキ使」を叩き続けるのか 何度も炎上した私が考える「バッシングの許し時」 (4/4ページ)

 さらに、自分は1万5000円の医療費を払う“上得意のお客さん”だとし、会計をするにしても、カウンターへ出向かせるのではなく、職員がこちらに来るべきだと主張した。これが非常識だとし、ネットは大炎上。朝の情報番組も執拗な取材をし、県庁にもクレームが殺到。小泉氏は謝罪会見を12日後の17日に行い、そして25日に自殺体が発見された。

 この時、ネットにはなんともいえない微妙な空気が流れていた。当件で迷惑を受けたのは、一義的には病院。次いで軽いものではあるが、こんな傲慢な人物に県政を任せる岩手県民。以上である。それなのに無関係な全国の大衆から同氏へのバッシングが殺到し、挙句の果てには死んでしまった。「ご冥福をお祈りします」の声が多数書き込まれたが、沈黙した人は「オレの書き込みが直接影響したかどうかは分からないけど、やり過ぎちまった……」という感覚も抱いたことだろう。

 また、同様に2015年の東京五輪エンブレム騒動は同年最大の炎上案件となったが、ここでは「パクリ疑惑」のデザイナー・佐野研二郎氏を「もっと追い込むぞ」という書き込みが見られた。そして、エンブレムが撤回になった時は「大勝利!」と歓喜の声を上げる。それでも「まだ追い込むよ」という書き込みがあったほか、自殺するまで追及の手を緩めないといった趣旨の意見もあった。本当に自殺したらどうするんだよ……。反撃を食らったり、身バレする可能性が極めて低い安全な立場から安易に人の人生を追い込むようなことをしてはいけないだろうよ……。

◆「あぁ、やり過ぎた」と思ってももう遅い

 今回の件で「ガキ使」の担当者が自殺をするようなことはないだろうが、ネットのバッシングは最悪人の命を絶つところまで行くことはある。韓国の芸能界を見ればそれは明らかだろう。その時に「あぁ、やり過ぎた」と思ってももう遅い。腹が立つかもしれないが、「もう十分叩いたから放置しておこう」という「許し時」「辞め時」はネットで自由に発言できる今だからこそ意識しておくべきではなかろうか。失敗した部下に対してその場でピシャリと怒るのはいいのだが、以後会う人会う人にその非を伝えたり、半年後に行われた忘年会でもそのことに言及されたら部下も「もうその話はやめろよ、この粘着バカ野郎が!」と逆切れしたくなるかもしれない。部下は最初に怒られたことにより、「禊」は済んだのである。

 まぁ、今回の日テレの上手な対処としては、『ガキ使』のプロデューサーがマクニール氏にすぐにアポを取り、同氏と話した内容を日テレのHPで公開し、人権問題等に真摯に努めている、という声明をさっさと出せばよかった、とは思う。

【プロフィル】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ニッポンの謝罪道】はネットニュース編集者の中川淳一郎さんが、話題を呼んだ謝罪会見や企業の謝罪文などを「日本の謝罪道」に基づき評論するコラムです。更新は隔週水曜日。

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