インドネシア 17年の森林火災激減は政府の功績か

南スマトラ州で消火作業に従事する男性。インドネシアは、野焼きが森林・泥炭火災の原因となっている=2015年9月(AP)
南スマトラ州で消火作業に従事する男性。インドネシアは、野焼きが森林・泥炭火災の原因となっている=2015年9月(AP)【拡大】

 ■15年から97%減 研究者は「自然要因」

 インドネシアは、2017年に森林・泥炭火災の発生件数が激減した。同国のシティ・ヌルバヤ環境・林業相によると、17年の発生カ所は2411カ所で、16年の3000カ所から37%減、15年の7万900カ所からは97%減となった。同相は政府による対策が功を奏したと胸を張ったが、外部からは自然要因も大きいとの指摘も上がった。現地紙ジャカルタ・グローブなどが報じた。

 ◆緊急警報や管理強化

 同国はスマトラ島やカリマンタン島を中心に毎年、乾期(5~10月頃)になると企業や個人による野焼きなどが原因の森林・泥炭火災が増加する。特に15年は、およそ20年ぶりともされる規模で火災が発生し、延焼面積は2万6000平方キロに及んだ。

 世界銀行によると、同年のインドネシアの森林・泥炭火災による経済損失額は160億ドル(約1兆7715億円)に上った。また、火災で発生した大量の煙が近隣のマレーシアやシンガポールなどへ流れて深刻な煙害をもたらし、同国は国際社会から批判を浴びることになった。

 これを受けてインドネシア政府は、本格的な火災対策に乗り出し、法制面の強化や早期発見体制の充実を図ったほか、泥炭地の保護・管理強化などを目的に泥炭復興庁(BRG)を設置するといった施策を講じた。シティ環境・林業相は「緊急警報の徹底などが、この2年間の森林・泥炭火災の抑止に貢献した」と述べ、政府の施策によるところが大きいと強調した。

 ◆乾期降水量2.5倍

 一方、オーストラリアの非営利研究機関フューチャー・ディレクションズ・インターナショナル(FDI)の研究者は、火災減少に対する政府の施策の効果は限定的で、雨など自然要因が大きいと分析する。

 この研究者によると、森林・泥炭火災が毎年多く発生するリアウ、西カリマンタン、中央カリマンタンの3州は17年乾期の降水量が15年同時期の2.5倍だった。インドネシア政府が対策を講じたとはいえ、長年続く野焼きの習慣が急激に薄れるとは考えにくく、政府の執行力の弱さや支援不足などもあり、効果としては自然要因の方が大きかったとしている。

 国営アンタラ通信によると、政府はさらに森林・泥炭火災防止に向けた3年計画の実行を検討中だ。ダルミン・ナスチオン調整相(経済)は「地方と中央の両政府による防止活動と監視体制強化などが中心になる」と述べており、執行力の強化や支援の見直しにも取り組むとみられている。

 これに対し、インドネシア大学経済社会研究所は、政府が計画を実行した場合、製紙産業やパーム油産業に影響がおよび、失業の増加や地域経済の減速などで76兆ルピア(約6308億円)の経済損失が発生する可能性があると試算した。政府に対しては、泥炭管理に近代化を導入すれば保全と商業利用の両立は可能だと提言している。(シンガポール支局)