京大iPS細胞研究所、脳の血管に関する論文で捏造 助教「見栄えを良くしたかった」

iPS細胞に関する論文で捏造で謝罪する山中伸弥教授、湊長博理事(左から)=22日午後、京都市左京区の京都大学(寺口純平撮影)
iPS細胞に関する論文で捏造で謝罪する山中伸弥教授、湊長博理事(左から)=22日午後、京都市左京区の京都大学(寺口純平撮影)【拡大】

  • iPS細胞に関する論文捏造に関して厳しい表情で会見する、山中伸弥所長=22日午後、京都市左京区の京都大学(寺口純平撮影)

 京都大は22日、京都大iPS細胞研究所の山水康平・特定拠点助教の論文について捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)があったと発表した。論文は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた脳の血管に関するもので、調査した結果、主要な図6点全てに不正があったと認定した。大学は論文を掲載した雑誌の出版社に撤回を求めており、今後、関係者を処分する方針。

 大学側の調査に対し、山水助教は「論文の見栄えを良くしたかった」と説明したという。

 大学によると、論文は昨年3月に米科学誌「セル・リポーツ」に掲載され、血中に含まれた薬物や有害物質が脳に入るのを防ぐ「血液脳関門」の機能を持つ構造体を、iPS細胞を使って体外で作り出すことに成功したという内容。

 昨年、同研究所相談室に「論文の信憑(しんぴょうせい)性に疑義がある」との通報があり、論文掲載のグラフの再構成を試みたが再現できず、7月に大学の通報窓口に通報した。

 大学側は9月、学外委員も含めた調査委員会を設置し、実験データの精査や関係者への聞き取りを実施。その結果、論文を構成する主要な図6個全てと、補足図6個中5個で数値の捏造や改竄が認められた。いずれも論文の主張に有利な方向に操作され、結論に大きな影響を与えていたことが明らかになった。

 実験データの解析や図の作成は、筆頭著者の山本助教が1人で行ったことを認めており、他の共著者の不正行為への関与は認められなかったという。

 会見した山中伸弥所長は「今回の論文は予定される臨床試験や他の教員とは無関係だが、論文不正を防ぐことができず非常に後悔、反省している。国民のみなさまに心よりおわび申し上げる」と述べた。